ユニークな植物入門図鑑2冊

 一昨年の暮れに浅井元朗『身近な雑草の芽生えハンドブック』(文一綜合出版)が発行された。本書は、芽生えの段階で雑草の種類を同定するための小さな図鑑だ。新書判サイズの大きさで、120ページという薄さ。薄いということは軽くて持ち運びに便利だということでもあるし、収録された植物も180種と少ないので、調べたい植物を探しやすいという特徴がある。小さな本なので、情報がコンパクトにまとめられている。ページの上部を色分けして、夏とか冬とか越年とか生育時期をあらわし、科名、原産国、日本での分布、生育期、草丈などが小さく1行で示してある。芽生えから始まる生育のステージを複数の写真で表し、花の写真も添えられている。写真の中にはスケールが埋め込まれ、実際の大きさも知ることができる。また類似の雑草を見開きで示し、判別しやすいように編集している。
 とても良くできた植物図鑑だが、タイトルのとおり芽生えで見分ける図鑑なので、利用者を選ぶという性格をもっている。雑草防除関係者は芽生えの段階で雑草を同定する必要があるのだ。まさにそのためのハンドブックである。
 似たような性格の植物図鑑で岩瀬徹『形とくらしの雑草図鑑』(全国農村教育協会)というのがある。こちらは280種の植物を取り上げ、似た雑草を見開きで示している。芽生えにはこだわっていなくて、生育途中の姿や、花や実、群落などが鮮明な写真で表されている。とくに雑草の小さな花のアップの写真がみごとで、地味な雑草の花がこんなにきれいだったのかと驚かされる。
 見本として、『身近な雑草の芽生えハンドブック』からは、ヨモギセイタカアワダチソウ、ハルジオンとヒメジョオンが見開きになったページを、『形とくらしの雑草図鑑』からは、オオアレチノギクとヒメムカシヨモギ、ハルジオンとヒメジョオンが見開きになったページを挙げてみた。どちらの図鑑もユニークな編集方針で、アウトドアに持って出ればその使い良さが納得できると思う。強いて言えば、『形とくらしの雑草図鑑』は凡庸なタイトルで、内容が伝わりにくく損をしているのではないか。


『身近な雑草の芽生えハンドブック』からヨモギセイタカアワダチソウ

『身近な雑草の芽生えハンドブック』からハルジオンとヒメジョオン

『形とくらしの雑草図鑑』からオオアレチノギクとヒメムカシヨモギ

『形とくらしの雑草図鑑』からハルジオンとヒメジョオン


身近な雑草の芽生えハンドブック

身近な雑草の芽生えハンドブック

形とくらしの雑草図鑑―見分ける、280種 (野外観察ハンドブック)

形とくらしの雑草図鑑―見分ける、280種 (野外観察ハンドブック)