穂村弘=監修『はじめての短歌』を読む

 穂村弘=監修『はじめての短歌』(成美堂出版)を読む。穂村は日経新聞の短歌欄の選者をしている。そこに送られてきた短歌を例にとってそれを改悪などして、良い短歌悪い短歌を解説している。

空き巣でも入ったのかと思うほどわたしの部屋はそういう状態     平岡あみ
空き巣でもはいったのかと思うほどわたしの部屋は散らかっている    改悪例

 穂村は、「散らかっている」の方は誤読の余地がない正しい情報が伝えられる書き方でビジネス文書に適しているという。「そういう状態」は「え、どういう状態?」って一瞬考える。一瞬考えるっていうのはコミュニケーションだという。心の動きが発動すると。
 良い短歌、悪い短歌がよく分かる。そういう意味では手軽な短歌の入門書とも言えるし、穂村の機知が現れていて感心する。しかしながら文章がちょっとかったるい印象だ。あとがきに、本書について2013年度の慶應丸の内キャンパスにおける短歌の入門講座がもとになっているとある。そのうちの主に講義部分を再構成したものだとある。それで穂村弘著ではなく監修になっている。
 いうなれば講義を書籍化したので、文章がちょっとかったるく感じられたのか。
 発行元の成美堂出版というと思い出すことがある。知人の植物学者が成美堂から普及版の植物図鑑を出版した。その奥付が再版以降を「題〇刷発行」ではなく、「重版発行」となっていた。著者に訊けば原稿買い切りなのだという。最初に原稿料が支払われて、その後増刷しても印税は支払われない。成美堂のすべてがそうなのかは分からないが、原稿買い切りの出版社はほかにもあり、特殊な方式とは言えない。ただ、少しばかり違和感がある。もっとも印税方式の出版社でも支払いが異常に悪いところよりは増しかもしれない。

 

はじめての短歌 (河出文庫 ほ 6-3)

はじめての短歌 (河出文庫 ほ 6-3)