獄舎の歌

 朝日新聞の「朝日歌壇」に吉島覚の歌が馬場あき子選で載っている(2月2日付け)。

 

年越して訳の分からぬ一体感真夜の獄舎に静かな熱気 (広島市)吉島覚

 

 獄舎と詠っていて広島市在住とあるから広島刑務所に服役中なのだろうか。今まで気がつかなかったが、ネットで検索してみると、同じく朝日歌壇に入選した作が何人かの人達によって紹介されていた。


かあちゃん、と独り獄舎でうずくまる母の死を知るこんなところで  (2018年7月8日)

 

パワハラだ!セクハラ!モラハラ!スメハラと言ったところで刑務所の中  (2018年9月23日)

 

娑婆近し金無しコネ無し小指無し窓を開ければ秋風寒し  (2019年12月1日)

 

 最後の歌で「小指無し」と詠っているから吉島は暴力絡みの事件で服役しているのだろうか。ネットのニュースには引っかからないのでどんな事件があったのか分からない。
 朝日歌壇に掲載された獄舎からの歌は、浅間山荘事件の連合赤軍の死刑囚坂口弘、殺人を犯しアメリカで終身刑に服している郷隼人、「迎賓館・横田」事件で服役中の十亀弘史、それにこれは俳人だが三菱重工ビル爆破事件の死刑囚大道寺将司らがいる。いずれも優れた短歌や俳句を詠んでいる。政治犯が多いが、吉島覚は郷隼人と同じくおそらく政治絡みではない罪で服役しているのだろう。


坂口弘の短歌
朝日歌壇に掲載された坂口弘の短歌、その I(〜1991年)
https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20070609/1181338332
朝日歌壇に掲載された坂口弘の短歌、その2(1992年分)
https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20070610/1181428904

 

郷隼人
朝日歌壇に載った囚人の歌
https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20160919/1474249021

 

十亀弘史
朝日歌壇・朝日俳壇を読んで
https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20160510/1462853118

 

大道寺将司
『棺一基 大道寺将司全句集』を読む
https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20120824/1345755934
大道寺将司句集『残の月』を読む
https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20160128/1453931642

 

 

歌集 常しへの道

歌集 常しへの道

 

 

 

坂口弘 歌稿

坂口弘 歌稿

 

 

 

棺一基 大道寺将司全句集

棺一基 大道寺将司全句集

 

 

 

残の月

残の月