墨田区と江戸川区の区境の川

旧中川、左:江戸川区、右:墨田区



 朝日新聞の朝日歌壇に十亀弘史の短歌が選ばれている(8月28日付け)。

 

墨田区江戸川区との区境の川の両側どちらも真夏  (東京都 十亀弘史)

 

 

 墨田区江戸川区の区境の川といえば旧中川だ。曲がりくねって決して大きいとは言えないがそこそこの川だ。どこかの大学や高校の生徒らがボート競技の練習をしていたり、東京都がカワセミの繁殖のための土手を作ったり、釣り人たちがハゼ釣りをしたりしている。またその釣り人に魚をねだってシラサギやアオサギがすぐ近くで待ち構えている。川にはユリカモメやマガモキンクロハジロなどが泳いでいる。時々ボラが水中から跳ねて大きな音を立てる。

 作者の十亀はしばしば朝日歌壇に入選しているが、新左翼の元活動家で、長い裁判の判決が確定して2016年に収監された。その頃の短歌。

 

獄中へ持ち行く本を買ひに来て分厚き本を選びてをりぬ

 

入獄を前に末期の眼(まなこ)めく空も川面も緑も美し

 

口角をあげて鏡の我を見る笑い少なき独居坊にて

 

職員の目を盗んでは場馴れせぬ我に手を貸す若き囚人

 

 

 作者注として、《「迎賓館・横田」事件で28年の裁判の結果「有罪」が確定し、4年7か月入獄します》とある。すると2020年ころ出獄したのだろう。最近は穏やかな歌を投稿している。