朝日歌壇に載った囚人の歌

 今朝の朝日歌壇に4人の選者に選ばれた2人の囚人の4首の短歌が掲載された(朝日新聞、9月19日)。
 まず殺人罪によってアメリカの獄舎で終身刑となっている郷隼人。2人の選者が2首を選んでいる。

灼熱の午後の獄庭(ヤード)の上空を旋回(パトロール)せしは禿鷹三羽


法螺(ほら)を吹く囚徒が一匹おりまして変化乏しき中で人気あり

 灼熱〜は高野公彦の、法螺〜は永田和宏の選。
 もう一人の十亀弘史は新左翼だった人。長い裁判の判決が確定して今年収監された。ひたちなか市在住とあるのはどこの獄舎か。3人の選者が2首を選んでいる。

口角をあげて鏡の我を見る笑い少なき独居坊にて


職員の目を盗んでは場馴れせぬ我に手を貸す若き囚人

 口角〜は佐々木幸綱と馬場あき子が、職員〜は永田和宏が選んでいる。
 死刑囚の歌人では連合赤軍だった坂口弘が優れた歌を詠んでいる。三菱重工ビル爆破で死刑宣告を受けた大道寺将司は俳句だが、非凡な句を詠んでいる。獄舎では自分の内面を深く見つめることになるので、囚人は優れた歌人俳人になるのだろう。皆ではないのだが。


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