昔から「分類」について強い興味を持っていた。人間にとっての分類ということの意味、また分類は進化論とも深い関係がある。
最初に分類に関して明晰に関心を持たされたのは、27年前に読んだハワイ大学の名誉教授で理論物理学と情報科学が専攻の渡辺慧「認識とパタン」(岩波新書)だった。同書から、
それ(分類)に成功しているというのは、我々が役に立つ直感と、役に立つ美的感情を持っているという証明でありましょう。特に私がここで「役に立つ」という形容詞を用いたことにご注意願いたいと思います。役に立つというのは我々の価値の実現に貢献するということです。
別の所で著者は、分類は客観的なものではなく、人間の主観的なものに基礎をおくと言っている。
ついで読んだのが中尾佐助「分類の発想」(朝日選書)だったが、これはあまり役に立たなかった。興味深いのが池田清彦「分類という思想」(新潮選書)だった。しかしこれは難解で、もう一度じっくり読み直してから発言しようと思った。
そうこうする内、9月に三中信宏「分類思考の世界」(講談社現代新書)が発行された。さっそく購入して、ぱらぱらと参考文献を見てみた。そこに渡辺慧の前述の文献があった。
渡辺慧(1978)「認識とパタン」岩波書店 ※「醜い家鴨の仔の定理」のもつ論理的正しさと分類的虚妄にそろそろ気づこうね。
渡辺はもう亡くなっている。三中は誰に対して「そろそろ気づこうね」と揶揄しているのだろう。それは池田清彦だった。池田は前述の文献で渡辺慧に対する共感を表明している。三中は池田の名前を明示的に挙げるのを憚って、池田に通じる渡辺の文献を挙げて揶揄したのだ。池田はすぐそれに気づくだろう。
これは面白くなってきた。三中と池田の本をじっくり読んで感想を書いてみよう。

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