蓮實重彦『見るレッスン』(光文社新書)を読む。副題が「映画史特別講義」とあり、蓮實が編集者相手に話して本書が成立している。だから分かりやすい文章になっている。
蓮實はいま日本映画が第三の黄金期に差し掛かったという。そして日本の監督の個々名を挙げてその作品を良い、悪いとはっきり断定する。これが面白い。
〔良い監督〕
三宅唱『きみの鳥はうたえる』『Playback』『ワイルドツアー』『やくたたず』
黒澤清『旅のおわり世界のはじまり』
小森はるか『空に聞く』『息の跡』『the place named』
小田香『セノーテ』『鉱 ARAGANE』
伊勢真一『えんとこの歌 寝たきり歌人・遠藤滋』
〔良くない監督〕
山戸結希『ホットギミック』『溺れるナイフ』
蜷川実花:天性の映画監督でない人が撮っているというのが見え見えです。
またアメリカ映画ではディズニーが徹底的に否定される。「わたくしは、ディズニーなどなくなったほうが、世の中にとって健全だと本当に思います」。蓮實はワイダもポランスキーも評価しない。タヴィアーニ兄弟のどこがいいのか理解不能だという。
2018年に「非英語圏の映画」というテーマで100本を決めた際、第1位に選ばれたのは黒澤明の『七人の侍』だった。しかし蓮實を始め日本人の選者が誰一人黒澤明に票を入れなかった。蓮實は1位に溝口健二の『残菊物語』を選んだ。
蓮實の大江健三郎論を読んだことがある。これは評価できなかった。しかし映画論については、淀川長治との対談が素晴らしかったので、この世界の第一人者だと思っている。
その対談について、
https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20070207/1170798991
その後この対談は文庫本に収録されているようだ。