山本弘の作品解説(55)「花」


 山本弘「花」、油彩、F10号(53.0cm×45.5cm)
 1978年制作。くり返して書くが山本最晩年の作品。素直に描かれた山本の花の絵は珍しいのではないか。ベージュっぽい絵具で厚く塗られた花、青いのは枝葉のようだ。
 「素直に描かれた花の絵」と書いたが、決して華やかな花ではない。山本は暗い淋しいものを華やかに描くことがあっても、華やかなものを華やかに描くことはなかった。本来華やかなはずの花を淋しく描いている。枝葉はもとより全体に徹底して省筆でありながら花の存在感をはっきりと描き切っている。
 最も華やかな三岸節子の花の絵に並べてみたい気がする。
 この作品も来月予定されている四谷三丁目のギャラリーTS4312の山本弘展に展示する予定。