丸木スマの「メシ」

 友人宅を半年ぶりに訪ねると驚いたことにたくさんの猫がいた。友人がエサをやると皿を囲んで争って食べた。その様子が丸木スマの絵「めし」を思い出させた。


 丸木スマは「原爆の図」で有名な丸木位里の母親。位里の奥さん俊が勧めて70歳のときに絵を描き始めた。まるで幼い子どものように拙い絵だが、それがなぜか良い絵なのだ。この絵は「めし」と題されていて、猫の家族がエサの皿を囲んでいる。絵の下方には本当に小さい子猫が描かれているが、親猫との比率が極端で、この点でも幼児の絵に似ている。
 しかしながらスマの絵の評価は高く、以前埼玉県立近代美術館丸木スマ展が開かれたほどだ。丸木位里の妹大道あやも60歳になってから絵を描き始めた。スマに比べてずっと上手いのにあまりおもしろくない。絵の良さは上手下手とは関係ないと思わせた。
 これも以前、神奈川県立近代美術館で松田正平展が開かれた折り、そのちらしを娘に見せると、これならスマさんの方がいいねと言った。部屋に飾るなら松田正平の方がいいけどとも。