「表現の不自由展・その後」に関して

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 日本美術史の佐藤康宏が「表現の不自由展・その後」で展示が中止になった件に対して、「日本美術史不案内 125 不自由、じゅうぶん不自由」でコメントしている(『UP』2019年10月号)。

……なお、1986年に富山県立近代美術館で展示された大浦信行「遠近を抱えて」が、県会議員や右翼団体の抗議を受けた結果、美術館から売却され、作品が掲載される図録までも焼却された事件があった。それを踏まえて、今回はその作品と続編となる大浦の映像、そして嶋田美子「焼かれるべき絵」が展示されていた。加治屋健司氏ら現代美術の専門家の論考・解説が備わるのでこれらの作品については贅言を避けるが、きわめて知的な操作から成る造形を単純化し、ただ昭和天皇の写真が焼かれる映像があるといって非難した人々――「表現」そのものを理解しない怠惰な精神も表現を抑圧する力となったのだった。

 富山県立近代美術館には当時右翼が館長室まで押し入って館長に暴行を加えた。その結果大浦作品を売却し、掲載された図録もすべて焼却されたのだった。この事件は美術館関係者に大きなトラウマを残し、事件後30年経った2016年の東京都現代美術館の「キセイノセイキ」でも、天皇の影を扱った小泉明郎の「空気」が美術館からの要請で出品を取りやめさせられている。「検閲」との批難を恐れる美術館からは、小泉が自主的に取り下げた形を取らせて。
 30年前の右翼の脅しは現在でもなお有効に機能しているらしい。