日本画廊で見られる山下菊二「あけぼの村物語」


 東京日本橋日本画廊で山下菊二展が開かれている(1月31日まで)。ここに山下菊二の代表作「あけぼの村物語」が展示されている。少々気味が悪い作品だ。老婆が首を吊っており、犬がその鼻水を舐めている。血色の池の中に男が倒れている。帽子をかぶったり鉢巻きをした険しい顔の犬が死んだ老婆を見ている。
 『芸術新潮』1993年2月号は「特集・アンケート・戦後美術ベストテン」と題して美術評論家学芸員など30人のアンケートを発表した。ここで山下菊二の「あけぼの村物語」が第7位に選ばれている。さらにその10年ほど前の欧米の美術評論家を対象にした同じようなアンケート結果では、この絵が第1位の評価を受けていた。
 「特集・アンケート・戦後美術ベストテン」で山下に投票したのは5人。北澤憲昭、菅原猛、高島直之、針生一郎、ヨシダ・ヨシエらが支持している。ベスト6までは、1位から河原温「浴室」シリーズ、三木富雄「耳」、河原温「日付絵画」シリーズ、関根伸夫「位相−大地」、白髪一雄「天異星赤髪鬼」、鶴岡政男「重い手」となっており、山下と同率7位は、荒川修作「作品」(木箱の中の綿の入った布団状のもののまん中にコンクリートのオブジェがある)、斎藤義重「鬼」、李禹煥「関係項」シリーズ(鉄板の上に石を置いたもの)となっている。
 山下菊二の「あけぼの村物語」について、芸術新潮はこう書いている。

 無類の鳥好きでもあった山下菊二は、戦争や差別、社会の歪みを、時に直接的に、時に間接的に描き、告発し続けた画家だった。その代表作《あけぼの村物語》は山梨県曙村で実際に起きた事件に取材したものである。非人道的な山林地主に対して立ち上がった労働者の一人が、地主に頭を棒で殴られ、村の消防団に追われた末に川で溺死。この事件の公判中に現地を訪ねた山下は、土着的なシュールレアリスムとでも言うべき手法により、悲惨な現実をグロテスクと諧謔をあわせ持つ寓話的作品に描き出した。

 この作品は、昨年の神奈川県立近代美術館葉山館の「戦争/美術1940-1950」にも展示されたし、2012年の東京国立近代美術館の「美術にぶるっ!」にも並べられた。きわめて重要な作品だ。長く日本画廊の所蔵品だったが、今度、東京国立近代美術館に収蔵されることが決まったという。収まるべき場所に収まることになったということで十分納得のいく結論だと思う。
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山下菊二展
2014年1月10日(金)−1月31日(金)
10:30−18:30(最終日17:00まで)
1/12、1/13、1/18、1/19、1/26 休廊
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日本画
東京都中央区日本橋3-1-4 画廊ビル別館1F
電話03-3272-0011
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