セルビアの画家ミレナ・ミロサヴリェヴィッチの「覚悟」がすばらしい

 Steps ギャラリーでミレナ・ミロサヴリェヴィッチ展が開かれた(3月10日〜15日)。ギャラリーの画廊主吉岡まさみのブログで、ミレナ・ミロサヴリェヴィッチのことが紹介されている。それがとても示唆的なので吉岡の許可を得て転載する。

彼女は今デュッセルドルフ芸術大学で学んでいる。この大学はヨーゼフ・ボイスが教えていた大学だ。ボイスは好きだけど、影響はそんなに受けていないとのことだった。
大学に入ったときことを教えてくれた。この大学は、入学した後に、指導教官を自分で選んで、その先生にお願いするらしい。ということは、指導教官のいない学生っていうのもいるのかなあ。大学の先生はなかなか作品を見てくれない。現在の指導教官のリチャード・ディーコンも、わたしは学生は取らないと言っていたそうである。
彼女は大学で3日間座り込みをした。
「私の作品を見てくれるまでここを動きません」
リチャード・ディーコンがやっと見てくれて、彼の教室にはいることができたのだそうだ。
もともと絵画を学んでいたのに、今は彫刻科に在籍しているのはそういう理由からだ。
大学では、学生が自分の作品のプレゼンテーションをやるのだが、この授業は2週間に1回行われるそうである。つまり2週間に1点以上作品を作らなければならず、その説明もして、数々の質問や指摘を潜り抜けなければならないのだ。厳しい。
必死である。
彼女は日本で作品を発表してみたいとずっと思っていたが、資金がなくてできなかった。今回は新聞社が彼女の作品を買ってくれたので、そのお金を使って来日できたそうである。
こういうガッツは日本の美大生にはなかなかない。
これは「覚悟」の違いだ。
作品をギャラリーで見てくれた人たちは、彼女は27歳です、というと一様に驚く。作品が「大人」だからだ。
・吉岡まさみBLOG http://stepsgallery.cocolog-nifty.com/

 最近、東北芸術工科大学の卒業生の銀座の画廊での発表が目立っている。作品の質も高い。なぜ東北芸工大の卒業生の制作の質が向上しているのか、個展をしている作家に聞いてみた。先生方が熱心だし、大学が山の中にあって回りに何もないからです。遊ぶところがないから制作ばかりしています。なるほど、納得した。
 ミレナ・ミロサヴリェヴィッチはデュッセルドルフ芸術大学で制作に励んでいる。東北芸工大生たちは環境によって制作に励まされている。それが大事なことだ。たった4年間の大学生活だ、勉強するのは今でしょ! 
 何かを達成するのは努力だけではない。才能が大きな要素を占めるだろう。だが才能があっても努力をしなかったら達成は難しい。才能がなければなおさら努力は大事だろう。努力をすれば誰でもある一定の成果は得られるのだ。
 ミレナ・ミロサヴリェヴィッチの優れた作品は、彼女の才能と努力の結果なのだろう。


 ミレナ・ミロサヴリェヴィッチ展については、こちらに紹介した。
Steps ギャラリーのミレナ・ミロサヴリェヴィッチ展が良い(2014年3月12日)