新国立劇場ドラマスタジオ修了公演『9階の42号室』を見る

 新国立劇場ドラマスタジオ第7期生修了公演『9階の42号室』を見る。作:飯沢匡、演出:栗山民也。新国立劇場演劇研究所で3年間学んだ研修生たちの修了公演だ。今回は日本の現代劇の喜劇が選ばれた。
 研修生の芝居はこれでなかなか上手だし、演出も一流なので結構見応えがある。それに修了公演ということでチケット代も安いのだ。そんなことで積極的に修了公演を見ているが、普段だったら決して見ない今回のような喜劇も見ることになって、それはそれで良い機会だったと思う。
 この7期生たちでは、井上ひさしの『少年口伝隊一九四五』と森本薫の『華々しき一族』も見た。『少年口伝隊一九四五』は朗読劇だったが、ほとんど感動した。初演からしたらもう何度も見てきたが、何度見てもすばらしい芝居だった。
 飯沢匡の『9階の42号室』は、ある一流ホテルの9階の42号室を舞台にした4篇のオムニバス戯曲だ。ドタバタ調の喜劇で、なるほど研修生はシリアスなものばかりではなく、こんな大衆劇みたいなものも経験する必要があるんだと気がついた。俳優たちの適性も見えてくるのだろう。
 第1場では東大を受験する子に付き添ってきた母親のほとんど一人芝居で成り立っている。受験の朝なのに子供はホテルのトイレに閉じこもったまま出てこない。母親が一人あたふたするが、受験の開始時間になってしまう。
 第2場では売れっ子女性漫画家とその秘書、出版社の社長と部下が入り乱れて、漫画家のご機嫌を取りながら次作の構想を練っているうちに、漫画家とボーイが駆け落ちしてしまう。女性漫画家の造形が草間彌生をモデルにしているようでおかしかった。
 第3場では42号室を舞台に選挙前の政治家が7千万円の裏金をやり取りする。それを横取りする謎の女が現れて……。猪瀬元都知事の5千万のことが思い出されて時宜を得た企画だった。
 第4場では、第3場で無くした数千万円がトイレに詰まっていたことによるドタバタが演じられる。
 芝居を見て楽しむのが喜劇の本質だとすれば、真面目な私は芝居を見ても(世界の)真実を追究したいなどと(無粋に)考えるのだから、まあ喜劇は向いていないということなのだろう。昨年赤坂アクトシアターで見た『しゃばけ』なんて、開演してしばらくしたらもう帰りたくなったほどだった。とは言え、チャップリンの『黄金狂時代』は何度でも見たいほどだけど。