ギャラリー現の松崎勝弘展が不思議だ

 東京銀座のギャラリー現で松崎勝弘展が開かれている(3月15日まで)。松崎は1969年茨城県生まれ。1991年にBゼミ schooling systemを修了している。1996年熱海の画廊で初個展。2003年からは毎年個展を開いているが、その内の1回2007年を除いてすべてギャラリー現で行っている。
 個展をする前に1989年から各地のグループ展に参加している。そのグループ展の内容が画廊に置いてあるファイルに書かれているので一部再録する。

・1993年 2人展「小笠原邸」(横浜)
 個人の家で作品を展示する。
 住人は暮らしながら作品と接し、観客は住人の案内で作品を見る。
・1994年 グループ展「UNDERGROUND MARKET」(銀座)
 静岡県熱海から東京銀座まで作品を持って歩く。
・1995年 グループ展「18 ROOMS」(熱海)
 ホテルの客室に作品を展示する。
・1999年 グループ展「第一回熱海ビエンナーレ」(熱海)
 熱海の風景をプリントしたTシャツを熱海の街中に展示する。
 熱海市民にもTシャツを着て街を歩いてもらう。
・2001年 グループ展「第二回熱海ビエンナーレ」(熱海)
 千葉県松戸から会場の静岡県熱海まで作品を持って歩く。

 何だか変わったことをしている作家だ。そのことを知って今回の展示を見ると、そんなにも唐突ではないのかもしれない。




 ギャラリーの壁にひとつだけ布袋が掛けられている。袋の中には制作の資料が入っているらしい。その袋のほかには何もない。これは何だろう?
 ギャラリーのスタッフに招かれて奥の事務室に入ると、テーブルの上に9枚のドローイングが並べられている。これは今回の個展の案内のDM葉書で、裏面に作家が肉筆でドローイングを描いているものだという。数百枚のDM葉書にすべてオリジナルのドローイングを描いていて、同じものは1枚もない。もしかすると、このDM葉書が本当の作品なのだろうか。個人の住宅やホテルの客室に作品を展示したり、はるかに遠い会場まで作品を持って歩いたりするような展示をしてきた作家だから、送ったDM葉書が作品で、個展会場には作品制作の資料をいれた袋を展示するという、個展の準備と完成した作品の順序を入れ替えた、ある種の倒立が今回のテーマかもしれない。
 ギャラリー現で行われた松崎の個展はすべて見てきたと思うが、こういった展示は今までなかったと思う。だから、倒立がテーマだと言いつのる自信はないのだが。ともあれミステリアスな展示なのだ。
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松崎勝弘展
2014年3月10日(月)−3月15日(土)
11:30−19:00(土曜日は17:30まで)
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ギャラリー現
東京都中央区銀座1-10-19 銀座一ビル3F
電話03-3561-6869
http://g-gen.main.jp/