赤瀬川原平と松山広視と松崎勝弘に共通するもの

 赤瀬川原平に「宇宙の缶詰」という作品がある。空き缶の内側にラベルを貼って、缶詰の内側を外部の世界とし、缶詰の外側の全世界・全宇宙を缶詰の中身に見立てたものだ。缶詰の中の小さな空間が「世界」に変わり、全世界・全宇宙が缶詰の中身に転換するという文字通り世界が裏返された作品だ。
 松山広視は広い画廊の壁に小さな点を1個だけ描いたインスタレーションを行っている。松山によって壁に点が描かれると、点が「図」になり、とたんに画廊の全壁面が「地」になる。地が主題として浮き出てくる。何もない、ある種空虚な壁面が、この時実体に変わる。
 松崎勝弘は個展会場の壁面に布製のトートバッグをひとつだけ展示する。バッグの中には作品制作の資料が入っている。作品そのものはすべて手書きのドローイングのDMとして、松崎及び画廊から送られている。画廊に展示されている資料の入ったバッグは、本来アトリエで制作するための素材なのだ。作品そのものは、すでに常連客に送られていて画廊にはない。展示されているバッグは作品としては空虚なものだ。
 この3つ、裏返された世界を表現したり、空虚な壁面が主題とされたり、個展会場そのものが無であったり、緩やかではあるがそこに共通するものがあるように思う。それはおそらく作品としては実体がないか、あっても希薄であることが、これら3つに共通するテーマなのだ。


マリーギャラリーの松山広視展は不思議だ(2013年8月5日)
ギャラリー現の松崎勝弘展が不思議だ(2014年3月13日)
赤瀬川原平「宇宙の缶詰」http://www.cinra.net/news/gallery/16348/1/