カンアオイが咲いている



 近所の公園でカンアオイ(寒葵)が咲いている。およそ被子植物中もっとも地味な花のひとつではないか。これが花なのだ。カンアオイウマノスズクサ科、常緑性多年草で日陰の林内に生育する。Wikipediaを参照すれば、カンアオイの花粉媒介はカタツムリやナメクジ、ワラジムシやヤスデが関わっているとの説もあるという。同じく形態としては、

非常に背の低い多年草。茎は地表、あるいは浅く地中を横に這うが、伸びは非常に遅い。まれに匍匐枝を出す種もある。根は太くて真っ直ぐなものを少数もつ。
葉は各茎に数枚だけつける。長い葉柄を持ち、葉はハート型か三角に近い形で、基部の両側は耳状に突出する。常緑性の種では葉は革質で厚く、多くは表面に雲状の白っぽい斑紋がでる。
花は冬季に咲き、短い柄の先に一つずつ付き、地表か、やや土に埋もれて表面だけを地表に出す。花弁のように見えるが実は萼片(萼)であり、放射相称で、3枚の萼片が合着し、筒状やつぼ状、釣り鐘状などの形の萼筒を形成し、先端は三裂の萼裂片となる。またまれに花弁をつけるが、退化しておりごく小さい。雄蕊は3本または6本。

 と書かれている。また分布の拡大についても「成長が遅いため生息範囲が広がりにくく、(中略)前川文夫は生息範囲の移動速度を「1万年で1km」と見積もっている」と言う。これが本当なら1年間に10cmということだ。すると10年で1mになり、これなら検証することは不可能ではない。私が育てているツタの盆栽なんか、30年でやっと幹の直径が3cmだから。
 しかし、何と言ってもカンアオイで特筆すべきことはギフチョウの食草ということだろう。ギフチョウは「春の女神」と呼ばれている華やかなチョウだ。その幼虫がカンアオイを食べて育っている。それで連想するのが宝井其角の句「あの声で蜥蜴(トカゲ)食らうか時鳥(ホトトギス)」。人は見かけによらないという意味だが、美しいギフチョウも美声のホトトギスも悪食なのだった。
 ネットで検索したら、村上鬼城カンアオイを詠んだ句があった。


軒 下 の 日 に 咲 き に け り 寒 葵

 カンアオイをストレートに「咲く」と詠むのはいかがなものかと、鬼城に対してだからおずおずと疑問を呈してみる。私の駄句、


寒 葵 知 ら ぬ 顔 し て 花 の ご と
寒 葵 誰 に も 花 と は 知 ら れ ず に
寒 葵 誰 に も 知 ら れ ず 咲 き 終 わ り