令和に寄せて

 朝日新聞の連載「オトナになった女子たちへ」で伊藤理佐が書いている(4月26日朝刊)。

……ふだん、ラジオ生活の今年50歳は、4月1日、「テレビの前」に座っていた。春休みのムスメ(9)も誘って。だって、ムスメは将来、
 「えー、〇〇君、令和生まれ? わかーい」
 とか、言う。絶対、言う。で、若い〇〇君を目で流しながら、年の近いほうに
 「ねーねー、令和って出た時、何してた?」
 って、聞く。絶対、聞く。飲み屋で。以上のコトから、この瞬間を見るのは、味噌でいうところの大事な「仕込み」ではないだろうか。だって、
 「平成 って出た時どこで何してた?」
 は、けっこう使った。わたしの「その時」は、これ。→→上京して1年目。風呂なしアパート四畳半。コタツで寝ていた。学生。漫画のアシスタントしながら生活費稼ぐ。貧乏なので痩せてた。(ここ。笑うとこ)。ふと起きて、テレビつけたら画面が暗くて「あ…」と。やっぱりそうで、しばらくして、あの「平成」を、見た。すごく空が暗くて…… なーーんて、言うと、
 「もう働いてた」「まだ中学生でした」「生まれてません」と、色々わかるのだ。

 同じ日の別の紙面に大澤真幸が「令和に寄せて」と題して記者に答えている。

 新元号の発表でここまで盛り上がったのは意外でした。……内向き志向の今回の『令和』肯定ムードからは、日本人が今抱えている独特の精神構造が透けて見える。『私たち』を誇りたい。でも、世界に向けて声高に叫ぶことはない。この矛盾のため、結局自分たちの内側だけで、盛り上がってしまう。
 「令和」の発表でも、安倍晋三首相が日本の美しさを強調していました、と記者が言うのを受けて、
 むしろ自信のなさです。……今はむしろ『私たち』の中だけで自分たちの固有性を誇ろうとしている。令和への改元で垣間見えた元号への愛着は、世界の片隅で小さく生きていくことは素直に受け入れられない、言ってみれば虚勢に近い感覚です。
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 さて、古田武彦元号史上に唐突に現れた白雉、白鳳、朱雀、朱鳥などを九州王朝のものだと主張していた。元号のことも知らないで、やれ令和がいい、平成が良かったなどと言っている日本人のなんと多いことか!