赤坂真理『東京プリズン』を読む

 赤坂真理『東京プリズン』(河出文庫)を読む。裏表紙の惹句から、

本の学校になじめずアメリカの高校に入学したマリ。だが今度は文化の違いに悩まされ、落ちこぼれる。そんなマリに、進級をかけたディベートが課される。それは日本人を代表して「天皇の戦争責任」について弁明するというものだった。16歳の少女がたった一人で挑んだ現代の「東京裁判」を描き、今なお続く日本の「戦後」に迫る、毎日出版文化賞司馬遼太郎賞、紫式部文学賞受賞作!

 天皇の戦争責任、具体的には昭和天皇の戦争責任を小説のテーマにしている。相かわらずそれは微妙なテーマなので、赤坂はマジックリアリズムの手法でヘイト集団からの攻撃をかわそうとしたのだろうか。さらにアメリカの高校でのディベートのテーマということにして、天皇の戦争責任の追及を直接的なものから外している。あくまでディベートの問題なのだと。
 しかし本質的にはまさに昭和天皇の戦争責任を問題にしようとしているのだ。しかし現実の東京裁判ではマッカーサーを代表とするアメリカのGHQが早々に昭和天皇の戦争責任追及をしないという方針で臨んでいる。すると、そのことの是非を問うことになる。そのような手続きで昭和天皇の戦争責任が問題視されてくる。
 そのあたりのことをほとんど真剣に考えてこなかったので、小説でありながら蒙を啓かれた。これを機に戦争責任や国体のことを考えてみよう。
 なお、この文庫本の表紙の絵が夏目麻麦だった。夏目の絵については娘が安かったら父さん買いなよと言ったが、もう安くはなかった。20年前のギャラリーQでの個展だったらまだ買えたかもしれないが。

 

 

東京プリズン (河出文庫)

東京プリズン (河出文庫)