今日の毎日新聞に橋爪大三郎による熊野純彦『本居宣長』(作品社)の書評が載っている。橋爪は社会学者、熊野は西洋哲学者で、レヴィナス、カント、ヘーゲルなどを専門にしている。また熊野は廣松渉の弟子でもある。橋爪も熊野も尊敬する学者たちだ。
西欧哲学が専門の熊野純彦氏が、本居宣長をテーマにする大著を完成させた。2部からなる。前半の「外篇 近代の宣長像」では、明治以来の学者や思想家が宣長をどう論じてきたかを概観。後半の「内篇 宣長の全体像」では、宣長の著作のなかみに立ち入った考察を加える。900頁もの圧倒的な仕事である。
外篇では村岡典嗣、津田左右吉、和辻哲郎、佐佐木信綱、羽仁五郎、時枝誠記、山田孝雄、久松潜一、西郷信綱、丸山眞男、松本三之助、吉川幸次郎、小林秀雄、相良亨らの論を紹介し、内篇では宣長の思索の歩みをたっぷり堪能できると言う。巻末の参考文献は450冊あまり。およそわが国で、宣長について語られた主な仕事が網羅的に掲げられている、という。
さらに「本居宣長は、国学を太い流れに変え、幕末維新を流れ下って、皇国史観という異様な実を結んだ。(中略)宣長は、江戸の幕藩制を明治近代につくり変えた、ナショナリズムの運動の源でもある。この系譜をきっちり押さえないと、日本の近代を考えることはできない」と述べている。
最後に、
本書の価値は、西欧哲学を専門とする熊野氏が、その対極に位置する思想家である本居宣長に関心を向けていること。そして、宣長の仕事には、世界に向けて普遍言語で論ずるに足る内実がある、と示していることだ。西欧と出会う以前の日本思想(漢文や和文で書かれている)を、西欧のポストモダンと肩を並べる水準で論じ切れば、この国の議論は新しいステージに飛躍できるだろう。
橋爪もたまたま本居宣長を論ずる書物を用意しているところだという。
読みたいと思ったが、900ページもあり、価格も8856円もする。図書館で借りてもこの大著を貸出期間内に読めるとは思えない。はてさて如何すべきか。
- 作者: 熊野純彦
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2018/09/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る