朝日歌壇の入選作から郷隼人と坂口弘

 朝日歌壇の選者は4人いて、私が好きなのは馬場あき子だ。9月28日の朝日歌壇で馬場あき子が第1席に選んだのがアメリカ在住の郷 隼人だった。郷はアメリカ在住だが正確にはアメリカの刑務所に終身刑で入っている。殺人を犯したらしいが詳しいことは分からない。名前もペンネームだ。出身地の鹿児島には年老いたお母さんが住んでいる。

病む母へ三味線草を押し花としてお見舞いのカードを贈らん

 馬場あき子の評。

 第1首の郷さんのお母さんは高齢で、病んでいる。その見舞いにもゆけず、慰めの品も贈れない悲しみが、子供の日に馴染んだ三味線草にこもっている。

 三味線草はぺんぺん草、ナズナだ。小さな実が三角形で三味線のバチに似ているのでこの名がある。寂しい草だと思う。
 死刑が確定してから投稿が禁じられて、朝日歌壇から姿を消した坂口弘のことを思い出す。郷も坂口も良い歌を詠む。その坂口が最初に朝日歌壇に登場したころの短歌。

クリスマスイブに保釈で出でし日が岐路にてありき武闘に染みて

 坂口弘連合赤軍のメンバーで、浅間山荘で同志たちを殺した罪で死刑が確定している。やはり母を慕う短歌を書いている。

朝日歌壇に掲載された坂口弘の短歌I(2007年6月9日)
朝日歌壇に掲載された坂口弘の短歌II(2007年6月10日)

坂口弘 歌稿

坂口弘 歌稿

歌集 常しへの道

歌集 常しへの道