アンシールの小倉涌展「マッカーサーの子どもたち−八月革命−」がおもしろかった


 東京日本橋馬喰町のunseal contemporary(アンシール)の小倉涌展がおもしろかった(10月27日まで)。残念ながら先週の土曜日で終わってしまったが。小倉は京都精華大学美術学部を卒業とテキストにあるが、生年卒業年とも書かれていない。1999年、香川県の「さかいでアートグランプリ」でグランプリを受賞している。1995年から2002年までグループ展多数とあるが、初個展は2010年に東京京橋のギャラリー・b・トウキョウだった。その後大阪のOギャラリーeyesで2回目の個展を開き、今回が3回目となる。
「作家のステートメント」として興味深いことが書かれている。

− 歴史画
かつて「歴史画」をその頂点にした「歴史画」が美術においては存在していた。やがて第2次世界大戦以降に徐々に美術のジャンルというものは廃れてゆき、コンテンポラリー・アートでの様々な表現が成立するようになってきた。そんな中で、現代史の「歴史画」をすることで、私はジャンルをまた持ち込むことになる。こうした事がアートにおいてどういう意味や意義を今後出現することになるのか、未だ私もよく分かっていない。
私は、幼少期、親によくヨーロッパの美術館展に連れて行ってもらって、古典絵画に対する親しみをもってきた。そして独学で2006年からテンペラ油彩の混合によるオーソドックスな画法を学んだ。
こうした技法の問題に加え、私は以前から政治思想史、社会学法社会学法哲学といった分野に関心を持っており、本を読んだりレクチャーに通ったりしてきたが、その興味の方向性と絵画の技法とが併さったところに、「歴史画」というものがあったのだった。


− 八月革命とマッカーサー
今回、マッカーサー昭和天皇らを、私はいたいけな美少年の姿で表している。この子らは、市民の熱狂と祈りとを、小さな体に一身に背負っている…。
かつて占領時代、マッカーサー宛に推定約50万通の手紙が日本人から送られたという。実に当時の人口の130人に1人が手紙を送った計算となる。その多数がマッカーサーに好意的であり、神格化した肖像画を描いて贈った者も少なくなかったという。そうした、日本人の祈りの欲望の対象としての天皇マッカーサーの像を、現代風の・現代の日本人が欲望する、美少年の姿に表現した。そして、祈りや熱狂の裏腹に「忘却」というものがあるのだ。少女・美少年像は、祈りやあるいは天皇主義において見られる、自らの欠損を埋める「少女趣味」によるものである。
そして私は昭和テイストに頼らず、ノスタルジーによらない表現を目指した。





 戦後すぐ昭和天皇マッカーサーを訪問して並んで写された写真があった。それを少年の姿にして再現している。床のタイル模様はフェルメールから引用している。また銀座4丁目の和光の前に立つマッカーサーの絵があるが、終戦後の和光は米軍に接収されてPXだったという。ファッサードにTOKYO PXと看板が出ている。戦艦ミズーリでの降伏文書に調印したときの絵。終戦詔勅が出された折り、二重橋前の広場で土下座している女性たち。空襲を避ける防空壕で、カッコいい兵隊を描いたトランプで遊んでいる女学生たち。歴史を忠実に再現するのではなく、意味をずらして描いている。
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小倉涌展「マッカーサーの子どもたち−八月革命−」
2012年10月5日(金)〜10月27日(土)
13:00−20:00、日・月休廊
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unseal contemporary
東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17
電話03-5641-6631
http://www.unseal.jp
レントゲンヴェルケの建物の1階)