東京品川御殿山の原美術館で森村泰昌展が開かれている(7月12日まで)。コロナ禍でしばらく休館していたが、今日から再開した。
森村は「名画や映画の登場人物あるいは歴史上の人物に自らが扮するセルポートレイト作品で知られる」(ちらしより)、今回もマネの「オランピア」に扮する大きな写真作品や、同じくマネの「フォリー=ベルジェールのバー」を再現した写真作品などが並んでいる。
しかし今回の目玉は動画『エゴオブスクラ』のようだ。50分に及ぶ作品で、東大駒場の講堂で学生たちを前にマリリン・モンローに扮して『七年目の浮気』のスカートがめくりあがるシーンを再現したり、マッカーサーと昭和天皇の会見を再現している。もっとも力を入れているのが三島由紀夫の自衛隊の市ヶ谷駐屯地でクーデターを呼び掛けた演説シーンだ。
森村は軍服姿の三島に扮して演説する。しかし、三島の演説の日本の政治だかの言葉を日本の文化、芸術に置き換えている。
この『エゴオブスクラ』の上映時間がほぼ50分、けっこう長い時間だがそれはだれることなく、興味を惹きつけているのは評価できる。
しかし、これは何だろう。三島に扮して森村は何を言いたいのだろう。
村上隆がアニメや漫画を美術に取り込んで「スーパーフラット」を作り出したというなら、森村はさしずめ「コスプレアート」を作り出したといえるだろう。夏と冬に東京ビッグサイトで行われるコミケのコスプレを高機能にしたものだ。高機能コスプレアートと言ってみたい。コミケのコスプレより本格的だしお金もかかっている。
原美術館は再開したが入場制限が続いている。事前に入場日時を指定しなければならない。
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森村泰昌展「エゴオブスクラ東京2020――さまよえるニッポンの私」
2020年1月25日[土]‐7月12日[日]
11:00-16:00(土日祝日は17:00まで)月曜休館
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原美術館
東京都品川区北品川4-7-25
電話03-3445-0651
http://www.haramuseum.or.jp/