『世界の名前』を読んで

 岩波書店辞典編集部 編『世界の名前』(岩波新書)を読む。これはちょっと変わった本だ。世界各国、各地域の人の名前の付け方をまとめたもの。小項目主義で編纂された事典のように、世界100の地域の命名法が100人の専門家によって執筆されている。これを読むと各地域でずいぶん違った命名がされているものだ。また同時に各地域の文化の違いも垣間見える。
 古代マケドニアにおいて、

 プトレマイオス朝の王たちは添名(そえな)によって区別された。1世は、大王の後継者戦争において対立する将軍からエーゲ海のロドス島を救ったことで、ソテル(救済者)と呼ばれた。2世は実の姉アルシノエと結婚したことからフィラデルフォス(姉を愛する者=愛姉王)、3世はエウエルゲテス(善行者)、4世はフィロパトル(父を愛する者)……

 古代マケドニアでも古代日本と同じく、近親婚があったのか。
 カザフスタンの例で、

……遊牧時代には年の差婚が少なくなく、高齢の父親から生まれた子どもはセクセンバイ(セクセン=80)などと命名された。

 すごい! 80歳で子どもをつくったということか! 池田君みたいだ。いや彼はおそらく避妊しているので子供はつくっていないが。
 スコットランドでは、

 ハンバーガーチェーン店のマクドナルドは、地方によって「マック」と称されたり「マクド」と略されたりする。その名の起源からすれば「マック」で区切るのが正しい。ゲール語Macは〜の息子という意味だからだ。

 マッカーサーはアーサーの息子、マクレガーはレガーの息子、マッキャンベルはキャンベルの息子か。
 ウガンダ、ニョロ語では、

 「彼らを放っておけ」という名は、あの子は夫の子供ではないのではないかなどと人に噂された時によくつける名前である。そう言う奴らは勝手に言わせておけばいいのだ。「それらは腹の中で死ぬ」というのは、妻のことをいろいろ知っているが、オレは言わない。腹の中に収めるという意味である。妻としては、夫は言わないけれどやっぱり知っているんだということになり、反省することになる。これは、子供の名前を介した夫の妻へのメッセージである。

 「よくつける名前である」だなんて! なんだか、すごいことになっている。
 ルーマニアでは、

 ルーマニアの首都ブカレストでバスに乗っていると、乗客が頻繁に十字を切る。時には運転手も切っている。気がつくと窓の外に教会が見えている。ここはヨーロッパの中で昔ながらの信心がより色濃く伝わっている方だと言えよう。

 100の地域の命名を通した文化の多様性が興味深い。


世界の名前 (岩波新書)

世界の名前 (岩波新書)