東京小金井市のギャラリーテムズで及川伸一展「succession」が開かれている(12月8日まで)。及川は1949年東京生まれ。1980年から1992年まで独立美術に出品していたが、1992年からは個展を主な発表の場所としている。これまでギャラリー汲美、ギャラリーテムズ、ギャラリーゴトウ、ギャラリー砂翁&トモス、Shonandai My ギャラリーなどで発表してきた。
今回の個展ではグリッドを主体にした作品が目立つ。だがその線はフリーハンドで描かれ、決して無機的なものではない。及川は線を多用する。それは形を描かないで作品を構成するためだろう。以前、及川から具体的な形が描かれている作品が好きではないと聞いたことがある。平滑な色面だけで作品をつくるのではなく、しかも形を描かないとなれば、線を用いて作品を構成することになるのだろう。そしてミニマル・アートをつくるつもりもないと言うから。
及川の作品は形の表現に関して禁欲的ではありながら、何か有機的な暖かみが感じられる。線を主体とした表現から想像されるよそよそしさがないのだ。及川は熱い抽象ではもちろんない。しかし、かと言って冷たい抽象でもないのだ。
最近ジャズのライブハウスで、演奏に合わせて及川の作品のスライドショーを見る機会があった。何十点もの作品を短時間で次々見せられたとき、意外だったのはアンゼルム・キーファーが連想されたことだった。価値ニュートラルに「思想なきキーファー」という言葉が浮かんだ。この場合の思想とは端的に政治思想を意味しているのだが。キーファーの具象と及川の抽象が響きあっているのがおもしろかった。
(写真には照明や人影が写り込んでいる)
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及川伸一展「succession」
2013年11月28日(木)〜12月8日(日)
11:00〜17:00(12/3、12/4休廊)
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ギャラリーテムズ
東京都小金井市前原町3-20-2
電話042-384-3564
http://www.gallery-tems.com
JR中央線武蔵小金井駅南口より徒歩8分
小金井街道を南下し、前原坂上交差点で斜め右の道に入り、質屋坂を下って道なりに進むと、右手に看板がある。