齊籐翔の個展「REAL|REALITY」を見る

 東京千駄木のギャラリーKINGYOで齊籐翔展「REAL|REALITY」が開かれている(3月22日まで)。齊籐は1984山梨県生まれ、2008年に武蔵野美術大学造形学部彫刻学科を卒業し、2010年に武蔵野美術大学大学院美術研究科彫刻コースを修了している。ギャラリーでの個展は今回が初めてとなる。齊籐の言葉。

REALとREALITY。似た言葉であるが、意味は全く違う。その二つの間に存在する「境目」のようなものを考察する。



 まずDMハガキにも使われている箱の作品がある。ぼんやりと人型が浮かびあがっている。縦横90cm×60cmの箱の天地に1cm間隔で糸を張り、それに着色して人の形を浮き上がらせている。糸の数は5,400本。実体がないかのような立体作品となっていて面白い。
 15年以上ほど前、コバヤシ画廊やぎゃらりぃセンターポイントで数千本のテグスを規則正しく立方体の形に張り巡らせた作品を作っていた川村直子を思い出した。川村はテグスで作った作品の中に無限を創造していた。また、8年前にexhibit LIVE & Morisで開いた菊元仁史のインスタレーションとも共通するものがあった。菊元はたくさんの糸と棒を張り巡らせて、立体作品から空間を消す作品を作っていた。


 齊籐の個展では、ほかにテーブル状の上に削った鉛筆が340本ほど立ててあった。父親に1本の鉛筆を削ってもらい、それを基に齊籐が「模刻」したものだという。父親の削った形に似ていながら同じには削れない。

 画廊の奥に両面が鏡のパネルが数枚、平行に設置されていて、その中心に金属パイプが挟まれている。パイプは鏡と鏡の間に挟まれているだけだが、鏡に写ってずっと向こうまで続いているように見える。

 もう1点の作品は平面で、極端に大きいドットで何かが描かれている。遠くから見ると男と女の顔になる。男女それぞれのたくさんの写真を合成し、できたものをパソコンに取りこんでドットを極端に粗くしたものだという。
 さまざまな試行をしているが、やはり糸で人型を浮き上がらせた作品が一番面白かった。今後どのような展開に至るのか見ていきたい。


独特の空間の試み、菊元仁史展を見る(2007年3月14日)
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齊籐翔展「REAL|REALITY」
2015年3月17日(月)−3月22日(日)
12:00−19:00(最終日17:00まで)
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ギャラリーKINGYO
東京都文京区千駄木2-49-10
電話050-7573-7890
http://www.gallerykingyo.com/