ギャラリーKINGYOの船橋みふゆ展が興味深い

 東京根津のギャラリーKINGYOで船橋みふゆ展が開かれている(3月29日まで)。船橋は1989年東京都生まれ、2014年に日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程を修了している。初個展は2013年に学内にあるA&Dギャラリーで開いたが、学外では今回が初めての個展となる。ギャラリーに貼られている履歴に船橋の言葉が記されている。

鋼材を用いた立体作品を主に制作しています。
構造体が内包する空虚を、とても好ましく感じます。

 私と話したとき、船橋は「空虚」という言葉でなく「空間」と言っていた。船橋の作品について語るとき「内包する空間」は重要な概念と言えるだろう。
 まず赤く塗られた作品が目に付いた。正面から見ると少し凹んだ面の上部中央に四角い窓が開けられていて、すっきりした表情をしている。そう思いながら側面に回ると、意外やがっちりとした構造を見せている。正面と側面で全く違う表情が見られる。



 つぎにパイプを2本平行して曲げたような作品がある。両端が床と壁に接し、また曲げられたくの字が床に接している。途中、三角形が5カ所2本のパイプを固定するような形で留められている。このパイプ様のものが作る空間が面白い。

 もう一つの筒のような形の立体は、船橋によると内部の空間と、何と言ったっけ、斜めの格子状の枠の重なりが、視点の移動によって変化するのが面白いと思って作ったという。作家はそう言っていたが、それだけだったら底の部分の複雑な構造や天井にあたる部分のこれまた複雑な構造は不要だろう。つまり作家の言葉は作品を説明しきっていないのだ。作家の言葉よりも作品の方が豊かだということだ。


 そのほか、ギャラリーの中庭のような前面に椅子のような作品も展示されていて、座ることができるようになっている。これについてはよく分からなかった。
 鋼材を使用しているため、重量は100kgを超えるとのこと。運搬も設置も大変だったろう。見る側にとってはなかなか興味深い展示だった。
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船橋みふゆ展
2016年3月21日(月)−3月29日(水)
12:00−19:00
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ギャラリーKINGYO
東京都文京区千駄木2-49-10
電話050-7573-7890
http://www.gallerykingyo.com/
東京メトロ千代田線根津駅千駄木駅 両駅から徒歩7分