板橋区立美術館の『種村季弘の眼 迷宮の美術家たち』を見る


 板橋区立美術館で『種村季弘の眼 迷宮の美術家たち』が開かれている(10月19日まで)。種村は1933年、東京池袋生まれのドイツ文学者。マニエリスムを紹介して、日本のマニエリスムブームの火付け役となったという。10年前に亡くなった種村が関わった内外の美術家の作品を集めて、今回の展覧会となった。種村季弘の眼、すなわち種村が共感を示した美術というくくりとなっている。展覧会のちらしには、エロティシズム、錬金術、吸血鬼など、さまざまなジャンルを横断して批評活動を行ったとある。自身の専門を活かしたドイツ系作家の紹介も目立っている。
 展示されている作家たちを見ると、今道子加納光於金子國義桑原弘明中村宏、真島直子、吉野辰海、四谷シモン秋山祐徳太子井上洋介赤瀬川原平美濃瓢吾野中ユリ森村泰昌宇野亜喜良ら。海外では、ハンス・アルプ、ゾンネンシュターン、ハンス・ベルメールエルンスト・フックス等々、かなりクセのある作家たちが目立っている。
 種村の選択は主流派、正統派はあまり含まれない。中心をちょっと外れた作家たちだ。私の好きな小説家、吉行淳之介を思い出した。吉行は、人間の生き方を追求した戦後派のあとに登場し、日常的な世界を描いた第三の新人と呼ばれたグループに属した。その中でも吉行はとくに「マイナーポエット」と呼ばれ、吉行もそれを積極的に是認していた。本展覧会の作家たちを見て、多くマイナーポエットの作家たちという印象を持ったのだった。
 通り一遍の教科書的ではない、種村季弘という強い個性のフィルターを通した選択を見るというのもなかなか刺激的だった。
 なお、銀座のスパンアートギャラリーのオーナーは種村季弘の息子にあたる。
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種村季弘の眼 迷宮の美術家たち』
2014年9月6日(土)〜10月19日(日)
9:30〜17:30(月曜休館、ただし祝日は開館し、翌日休館)
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板橋区立美術館
東京都板橋区赤塚5-34-27
電話03-3977-1000
http://www.itabashiartmuseum.jp/