井上ひさし『きらめく星座』をブルーレイで見る

 井上ひさし『きらめく星座』を先月紀伊国屋サザンシアターで見たが、とても良かった。昔テレビで放映した同じ芝居が録画してあったので、十数年ぶりに見直した。いまではブルーレイにダビングしてある。先日の舞台が3時間だったのに、少し省略してあるとかで、これは2時間45分だった。
 1999年10月の紀伊国屋劇場、こまつ座公演で、演出は木村光一、主演のオデオン堂夫婦は岡まゆみと犬塚弘、その娘と息子が郡山冬果と高橋克実、娘婿の源次郎が辻萬長、文案家が高橋長英憲兵伍長が寺尾繁輝だった。大道具はほとんど一緒、今回の公演が1999年の公演をかなり踏襲しているのがわかる。やはりとてもおもしろかった。
 そして2度も見ると少し台本の欠点も見えてくる。脱走兵たる息子正一が上海航路で給仕をしているとき、中国へ渡る日本人のあまりの下品さに失望し、憲兵隊に自首することを決意する。しかし、その程度の失望で死刑の可能性まである自首を決意するのは説得力に欠ける。しかも、自首を決めて憲兵伍長の下宿している自宅へあらわれたとき、憲兵が出張になったとの電報で自首を思いとどまったということ。その憲兵伍長でなくても憲兵隊へ自首すればよいのではないかと誰でも思うだろう。また時々自宅へ出没する正一の捕捉に失敗したとき、憲兵は家族を拷問してでもその行方を捜すだろう。
 だが、このような些細な瑕疵よりも、晩年の傑作戯曲のすばらしさを知っていれば、ちょっと過剰な注文も出してみたくなるというものだ。それだけ井上の晩年の達成度はすごかった。
 録画しておいた井上の芝居は、まだ『闇に咲く花』『雪やこんこん』『頭痛肩こり樋口一葉』『黙阿弥オペラ』『父と暮せば』『国語元年』がある。わが楽しみは尽きることがない。


こまつ座公演『きらめく星座』を見る(2014年9月28日)