こまつ座公演『きらめく星座』を見る


 新宿紀伊國屋サザンシアター井上ひさし・作『きらめく星座』(こまつ座公演)を見る。井上ひさしがほぼ30年前に書いた芝居。ちたしから、

 時は太平洋戦争前夜昭和15年から16年の東京、浅草のレコード屋オデオン堂の家族と、広告文案家の下宿人は皆、音楽好きな一家である。しかもその音楽は"仮想敵国のジャズ"であったり…。
 更に陸軍に入隊していた長男が脱走、追ってきたのは憲兵伍長、いつの間にかオデオン堂は非国民の家と噂されてしまう。(後略)

 井上ひさし「昭和庶民伝3部作」の第1部。戦争直前の庶民を描いていて笑わせるが、同時にきな臭い空気が立ちこめてきて、警官や憲兵、町内会などの締め付けもきつくなってくる。そんな世相を歌や笑いを散りばめて、面白いドラマに仕立てている。脱走兵の長男と憲兵の追いかけっこのスラップスティック、妹と結婚した傷痍軍人天皇崇拝、排斥される軍歌がマーチだったりカルメンで歌われる曲の替え歌だったり、本来深刻な話題であるところが喜劇にされている。そうやって戦前の体制が批判されることになる。
 後期の芝居『紙屋町さくらホテル』の完成度に比べれば、多少若書きと言えるかも知れないが、優れた戯曲だ。オデオン堂の後妻で元歌手という設定の秋山菜津子の歌う「青空」の歌がすばらしかった。
 先日見た『少年口伝隊一九四五』とともに、井上の芝居の魅力を再確認した。『きらめく〜』の初演時だったかのテレビ放映を録画したビデオテープがあったはずだが、あれをもう一度見てみよう。