種内変異

 小学校5、6年生の時の担任が宮嶋光男先生だった。植物学が専門のようだった。たくさんの植物の名前を教わったし、時々花や野菜の種、樹木の苗木などを分けてくれた。もらったオオイボタの苗は数年後花を咲かせ、それが臭くて閉口した。学校の裏庭に死んでいた猫を見つけた時は理科の時間に解剖した。腎臓が腫れていてこれが死因だろうと言われた。授業がユニークだった。戦争中はトラック島にいたらしい。復員するとき、アメリカ軍に植物の観察手帖や日記などすべてを没収されたと残念がっていた。
 宮嶋先生は変わった瓢箪やヘチマの育種をしていて、それらの種も分けてくれた。ヘチマは大きさが数センチという小さなものを作っていた。瓢箪は逆に長さが1メートル以上ある大きなものだった。長いヘチマは風呂で両端を持って背中が洗えて便利だった。
 宮嶋先生のこれらの育種は品種改良であって新しい種を作り出したのではない。もともとヘチマや瓢箪にごく長い形質や小さな形質が組み込まれていたのだ。進化に関わる突然変異と種内変異に関しては、河野和男「カブトムシと進化論」(新思索社)が圧倒的に優れている。進化論が新しい段階に入った記念碑だろう。

カブトムシと進化論―博物学の復権

カブトムシと進化論―博物学の復権