「月刊現代」が休刊した講談社から佐藤優責任編集なる「現代プレミア」と冠のついた「ノンフィクションと教養」というムックが出版された。定価1,200円。ノンフィクション好きの私にはこたえられない企画だ。
まず10人がそれぞれ100冊ずつのノンフィクションを推薦している。その10人とは、岩瀬達哉、魚住昭、加藤陽子、佐藤優、佐野眞一、重松清、二宮清純、野村進、原武史、保坂正康の面々。ざっと1,000冊が推薦されていることになる。さらに30人の作家やジャーナリスト、漫画家や右翼から「体験的ノンフィクション論」を寄稿してもらっている。
この1,000冊のリストから総合ベスト10が紹介されている。
1.立花隆「日本共産党の研究」(講談社文庫)
2.吉田満「戦艦大和の最後」(講談社文芸文庫)
3.大岡昇平「レイテ戦記」(中公文庫)
4.松本清張「昭和史発掘」(文春文庫)
5.本田靖春「誘拐」(ちくま文庫)
6.ハルバースタム「ベスト&ブライテスト」(朝日文庫)
7.沢木耕太郎「テロルの決算」(文春文庫)
8.石牟礼道子「苦海浄土」(講談社文庫)
9.山崎朋子「サンダカン八番娼館」(文春文庫)
10.鎌田慧「自動車絶望工場」(講談社文庫)
ちょっと拾い読みをしてみたが面白そうだ。森毅が書いている。
司馬(遼太郎)は全部は出さない。宗教担当の記者として出発したはずだが、空海や親鸞に触れても日蓮に触れたのを目にしたことがない。現在の仏教についても、真宗や禅宗はよく出てくるが、法華宗は出てこない。宗教的関心は全世界におよんでいるが、カトリック中心でプロテスタントや異端に触れたものはあまり目にしない。
なにより、今の時代にかかわるイスラムを問題にしない。司馬のノンフィクションでは、語られていないことが、とても気になる。
佐野眞一 たとえば、大失敗とは言えないかもしれないけど、開高健の「ベトナム戦記」。これは失敗作だと僕は思っているんです。それから甦るのに、「夏の闇」(新潮文庫)まで20年ぐらいかかったんじゃないかな。これは小説ですが、紛れもない傑作。そういう例はありますよね。開高健も「ベトナム戦記」は決していい作品だとは自分でも思っていなかったと思いますよ。「輝ける闇」(新潮文庫)を直後に書いたけど、これもダメ。「夏の闇」まで待たなくちゃならなかった。
佐野眞一と佐藤優なんて贅沢な企画だ。ついでにこのムックについて。雑誌の形式で流通上は単行本というのが日本で造語されたムック。雑誌は次の号が出るまでの命で、短期間で返本される。単行本は新刊なら最大4カ月間書店に並べられるし、常備寄託にされれば1年間も並べられる。あと正味(卸価格)が雑誌の方が低いのだと思う。

- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/05/16
- メディア: ムック
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