小池正博 編著『はじめまして現代川柳』を読む

 小池正博 編著『はじめまして現代川柳』(侃侃房)を読む。現在書かれている川柳の場合、よく目にするのは新聞川柳・時事川柳・サラリーマン川柳などだと言う。それに対して現代川柳は、文芸としての川柳を志向する作品だ。文学性が高く、塚本邦雄岡井隆の前衛短歌に共通する傾向が強く、難解な印象だ。暗喩が多かったりシュールリアリスティックで、一読理解しがたいものも多い。前衛短歌に比べて文字数も少なく、七・七の14字(武玉川調)や自由律もあり、一層難解という傾向が感じられる。

 本書は35人の川柳作家を採り上げ、それぞれ小池による解説と代表句が見開き2ページずつ、さらに主要句が見開き4ページと、作家一人に8ページが充てられて紹介されている。一人12句+64句の76句、だから35人で2600句ほどが紹介されていることになる。

 印象に残った句を拾ってみる。。

 

日没を待ってダミーと入れ替わる     浪越靖政

犯行の前後に入れる句読点     丸山進

寝坊してタイムマシンに乗り遅れ    同

生姜煮る 女の深部ちりちり煮る     渡部可奈子

あかつきはひとりのこらず死ぬ ほたる      同

妻一度盗られ自転車二度盗らる     渡辺隆夫

富士を見た人から税がとれないか       同

コロボックルを縛ったりしてどうするの     小池正博

アウトなど阿部一族は認めない            同

樹木葬希望 ウルシを植えてくださいね     滋野さち

戦争も蛇も見つからないように来る          同

名刀は芸術品になり果てて     筒井祥文

ふらいぱん舟になろうとして困る     野沢省悟

もう少しモナカのアンでいるつもり     松永千秋

濁流は太古に発し流木の刑     河野春三

あれが鳥それは森茉莉これが霧     飯島章友

焼きモスラ左右同時に刺すフォーク     川合大祐

お店から盗って来た本くれる彼     竹井紫乙

サクラ咲く時「もっと」って言うんです     兵頭全郎

おはようございます ※個人の感想です        同

ねえ、夢で、醤油借りたの俺ですか?     柳本々々

 

 14字の武玉川調をいくつか挙げる。

 

クラス会にもいつか席順     清水美江

無理して逢えば何事も無し     江川和美

監視カメラはオフにしていた     かわたやつで

 

 

はじめまして現代川柳

はじめまして現代川柳

  • 作者:小池正博
  • 発売日: 2020/10/29
  • メディア: 単行本