『坪内稔典自筆百句』(沖積舎)を読む。2016年、坪内の編著書が100冊を超えたことを機に、沖積舎の舎主から100句の色紙展を提案され、それをまとめて本書となった。ただ、坪内は「自慢じゃないが字が下手である。その証拠がこの本だが……」と書く。
坪内は俳人で、ユーモアのある俳句やナンセンスな俳句で有名だ。カバを詠むことでも知られている。本書からいくつかを引く。
三月の甘納豆のうふふふふ
東風吹いて君もオランダミミナグサ
一羽いて雲雀の空になっている
百日草がんこで知れる父と母
炎天の男錨の匂いして
十月の椋も榎も見上げる木
月光の折れる音蓮の枯れる音