澁谷知美『日本の包茎』(筑摩選書)の書評を渡邊十絲子が書いている(毎日新聞4月3日付)。本書の副題が「男の体の200年史」というもの。渡辺は書く。
……多くの男性は包茎を恥と感じるが、その価値観は男性だけのもので、女性は全然気にしていない。包茎は日本人男性の多数派(ある医学調査では6割以上)なのに、なぜ恥ずかしいのだろうか。病気でないのに手術を受けるのは、不自然ではないのか。
そして、包茎を恥とする文化は「男性による男性差別」であると著者は見ているという。続けて、
このような事情で男性は劣等感を抱きがちだが、それを巧妙に刺激して大儲けしたのが、包茎手術を勧めるクリニックだ。ひところは、いくつもの男性向け雑誌がタイアップ記事(実際的には広告)で「女は包茎が大嫌い」というキャンペーンを展開した。そこで「女性の意見」として紹介されていたのは、実は男性が作為的に用意した言葉だ。本来は必要のない手術を受けさせるために包茎をこきおろし、でも「悪口を言っているのは女性」という体にしたずるさに、強い怒りをおぼえる。好きな男性が包茎だったので嫌いになったという女性がもし本当に存在したら、お目にかかりたいぐらいのものだ。
渡邊さん、包茎の男性のために優しい言葉を伝えてくれる。だが、私の知人で奥さんから指示されて包茎の手術を受けた者がいる。詳しいことは知らないが、おそらく彼は早漏だったのではないか。それを奥さんが嫌って、早漏を直すために手術を受けさせたのではないかと推測する。手術を受けたが奥さんの期待は叶えられなかったのか、間もなく二人は別れてしまった。知人ももう亡くなってしまったので真相は分からない。
奥さんが彼に手術を受けさせたのは、男性向け雑誌のタイアップ記事の影響だったのではないか。
さて、私事だが、別件で泌尿器科を受診したとき、おじいさん先生が半ば笑って、あんたは軽い包茎だが手術をするほどのことではない、と軽く宣告された。まあ、そのこと自体は自覚していたから驚きはなかったけれど、そんな言い方をされたことが印象に残ったのだった。
書評を紹介したけれど、あらためて本書を読むことはないだろう。