高橋源一郎『誰にも相談できません』を読む

 高橋源一郎『誰にも相談できません』(毎日新聞出版)を読む。毎日新聞におよそ5年間にわたって掲載された「人生相談」から100本を選んだもの。主に家庭内の悩み、夫婦や親子、嫁姑、恋人、友人、悩みは様々だ。『アンナ・カレーニナ』の有名な言葉「幸福な家庭はみな同じように幸福だが、不幸な家庭はみなそれぞれに不幸である」のとおり、皆さんこんなにもいろいろに悩んでいるのだ。振り返れば私も家庭であったり、職場であったり、女性関係であったりそれなりに悩みは少なくなかった。ただそれらは自分で考えて決着をつけてきたので、こんな風に公に相談しようと考えたことはなかった。

 こうして人生相談100本を続けて読めば、その悩みを引き受けて回答をしている高橋に同情せざるを得ない。仕事とは言え決して楽なことではないはずだ。

 中で他人事として一番面白く読んだのがこれだった。 

Q 若い頃に離婚し、現在独り身です。離婚後も継続的に女性と交際はあります。ただ、年下の相手との年齢差が徐々に拡大し、現在の彼女とは50歳以上の開きがあります。年齢に見合った女性との出会いもありましたが、共感できる事柄がなく、大人の恋は成立しませんでした。私自身は成長できず、このまま朽ち果てていくことに不安を感じています。よきアドバイスをお願い申し上げます。  (78歳・男性)

A あの……78歳にして「将来の不安」が「つきあう女性との年の差が年々開くばかり」なんて、他の質問者に怒られるんじゃないかなあ。(中略)あなたの生き方を「朽ち果てていく」と呼ぶのなら、朽ち果てたい人はたくさんいると思います。自信をもって、自分の道を歩いていってください。というか、なぜそんなにもてるのか、その秘訣をみんなに教えてあげてはどうでしょう。でも、その前にまずぼくに教えてくださいね。

  回答する高橋は4回の離婚歴があり、現在は5人目の奥さんと暮らしているという。高橋に対しても、『ひょっこりひょうたん島』の魔女ペラさんに倣って言えば、「感心するわよね」だ。

 私もバツ2だが、再婚する気になれないのは、新しいパートナーと新しい生活を始める情熱が湧かないからだ。共同生活というのは価値観のすり合わせが必要だ。若い頃と違ってもうその情熱がないという身から見たら、高橋の5回の結婚には半ば呆れ半ば感心しちゃうのだ。

 

 

 

誰にも相談できません みんなのなやみ ぼくのこたえ