冨山和彦『コロナショック・サバイバル』を読む

 冨山和彦『コロナショック・サバイバル』(文藝春秋)を読む。副題が「日本経済復興計画」というもの。佐藤優毎日新聞に書評を書いている(66日付)。それを引く。

 冨山氏は、新型コロナウイルスがもたらす経済危機は3段階で到来すると予測する。第一波がローカルクライシスだ。〈出入国制限はもちろん、外出制限までもがほとんどの国や地域でかかるなか、打撃を受けているのは、観光、宿泊、飲食、エンターテインメント、(日配品、生活必需品以外の)小売、住宅関連などのローカルなサービス産業である。(中略)こうしたL(ローカル)型産業群は今やわが国のGDPの約7割を占める基幹産業群である。しかもその多くが中堅、中小企業によって担われており、非正規社員やフリーターの多い産業でもある〉。

 それに続いて第二波のグローバルクライシスが到来する。自動車、電機などのグローバル大企業のサプライチェーン(供給網)が崩れるのみならず、住宅、衣料などでも世界的規模で買い控えが起きる。その結果、グローバルな展開をする大企業のみならず、下請けの中小企業も大きな打撃を受ける。第二波の到来までは不可避と冨山氏は考えているようだ。ここまでで危機を食い止めておかないと第三波のファイナンシャルクライシス(金融危機)が起きる。金融危機が起きると、〈経済システムの血液であるマネーを循環させる「心臓」までもがひどく傷んでしまい、これがさらに実体経済を痛めつける負の連鎖に入ってしまう〉。緊急危機を防ぐためにあらゆる手を打つことが政府に求められている。

 冨山氏は、〈国でも企業でも、こういう時は本気で守るべきものを明確にして優先順位をつけるべきである。今回の危機の大きさと特性を考えた時、私は守るべきものは二つ、「財産もなく収入もない人々の生活と人生」と「システムとしての経済」である〉と指摘し、中小企業への緊急融資だけでなく、給付金の支給に政府が踏み切ったのも正しいと評価する。評者も同意見だ。 

 そして経営者のとるべき態度を指摘している。平時と違ってこんな時こそ、経営者が守るべきものを明確にして果断に決断しなければならない。「ウイルス感染症でも基礎疾患を持っている人は重症化リスクが高いようだが、企業も同様で」と冨山は書く。大企業の基礎疾患は「古い日本的経営」病で、中堅・中小企業の基礎疾患は「封建的経営」病だと指摘する。今まさにリーダーの真価が問われているのだ、と結ばれている。