半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版』を読む

 半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版』(文春文庫)を読む。昭和20年8月15日の前日8月14日の正午から15日の正午の玉音放送までの24時間を1時間刻みで描いている。およそ300人にもの当事者たちにインタビューを重ねて、大臣たちや軍人たちが終戦を巡って、無条件降伏か徹底抗戦か、武器まで取って議論し対立したリアルタイムのドキュメンタリーだ。見事というしかない。

 終戦昭和天皇の決断ですんなり決まったような気がしていたが、紆余曲折があり、クーデターもどき?があり、最後までどうなるか分からなかったことは知らなかった。天皇玉音放送の録音盤ももう少しで反乱部隊に奪われるところだった。

 本当に最後の24時間に何が起こっていたのかを1時間ごとに掘り起こして記録していっている。阿南陸軍大臣は15日早朝切腹した。部下の竹下中佐が見守るなか、大臣は割腹のあと短刀を右頸に押し当て前に引いた。血がほとばしったが、体は倒れなかった。竹下中佐が介錯いたしましょうと声をかけたが、無用だ、あちらへいっておれ、と答えた。割腹して1時間余をへてなお、陸相は正座した姿勢を保ち、呼吸音ははっきりと聞かれた。しかし意識はないようであった。竹下中佐がそばへ寄って短刀をとって介錯した。

 実に見事なドキュメンタリーだ。多くの日本人が本書を読むべきだと思った。有名は本で映画化もされているのに、私はやっと読んだのだった。