私たちは小さいときからお話を聞いたり本を読んだりして、誠実なこと、誠意を持つことが大切なんだと教わってきた。誠実であれば心は届くのだと。
私たちはやがて青年になる。好きな女の子ができる。通学の途中で、通勤の途中で彼女のことを目で追っている。いつも彼女のことを考えている。彼女のことがただ好きなだけだ。それ以上のことなんか考えられない。ある時ついに決心をして通学の途中に、通勤の途中に告白する、手紙を渡す、付き合ってください。
私たちの誠実な願いに対して彼女たちはどういう態度を示すか。ほとんどが無視されるだけだろう。いったいその時彼女たちはどんな風に思っているのか、もてそうな女性たち何人かに聞いてみた。
迷惑なのよねえ、突然前に立ちふさがって。勘違い男が多いよ。もう無視します。何考えているのかしらねえ。ばっかじゃん。
私たちは誠実であれば誠意があれば心は通じると教わったのではなかったか! それが一顧だにされないのだ。
そこで谷川雁の詩を引用する。「天山」から。
みんな嘘だ
なかばくずれた修辞の窓から
ありもしない季節が呼んだだけなのだ
認識は放浪のつぎに来た