東京広尾の工房親で「紙を想う」展が開かれている(11月28日まで)。一条美由紀、クボタタケオ、小林翼、作間敏宏、中谷真理子の5人の作家が出品している。このうち作間敏宏を紹介したい。
作間は1957年宮城県生まれ、1981年に東京藝術大学大学院を修了している。今までもリアスアーク美術館や、O美術館、練馬区立美術館、愛知万博日本館、岡本太郎美術館などで、主にインスタレーション作品を発表している。
今回は「紙を想う」ということで、拓本のようなフロッタージュ作品を発表している。素材はキャンバスにパラフィン紙、鉛粉、アクリルとある。作間が長年こだわっている人の名前をフロッタージュしている。画廊の配布しているテキストから作間の言葉、
パラフィン紙や亜麻仁油紙のような薄い油紙には、日焼けで剝けた皮膚(=身体の転写)のような肌触りがあり惹きつけられます。
いっぽう、ヒトの名前をフロッタージュで紙に転写する行為には、その人を手探りで記憶しているような感触があります。
うっすらと向こう側をほのめかすフラジャイルな皮膚=紙が、何人もの人の記憶を畳み込みながらさまざまなトーンをつくって積層してゆく――紙をめぐってそうしたことを考えています。
写真では見づらいが、フロッタージュされた何人もの名前が、濃く薄く重なって、あたかも積み重なった記憶のように明瞭だったり朧(おぼろ)だったりしている。作間の新しい展開ではないだろうか。
一見地味な作品だが、表現されている世界観は深いと思う。
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「紙を想う」
2021年11月13日(土)―11月28日(日)
12:00-19:00(日曜日18:00まで、最終日17:00まで)月曜・火曜休廊
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工房親(ちか)
東京都渋谷区恵比寿2-21-3
電話03-3449-9271