巷房地下の作間敏宏展「治癒」を見る


 東京銀座のギャラリー巷房2と同ギャラリー階段下で作間敏宏展「治癒」が開かれている(5月31日、今日まで)。どちらも銀座奥野ビルの地下1階にあるスペースだ。正に地下室といった空間で、とくに階段下というのは文字通り階段の下の物置だった場所をギャラリーにしている。巷房2というのは狭いがギャラリーという空間になっている。以前アラタニウラノを設立した荒谷さんがここでスペースKobo & Tomoというギャラリーを経営していた。そういう空間だ。

 まず階段下を見る。床に布が敷かれていて、その上に小さな電球が置かれてぼーっと光っている。数えたら電球は50個近くあったが、光度が低いので空間はかなり暗い。電球は奥まで敷かれた布の中に半ば埋まったように置かれている。後で知ったが、布はガーゼだった。暗い電球の光は、微かに瞬いているような小さな生命を思わせた。



 隣の巷房2を見る。木で作られた大きな家の形の立体が画廊いっぱいに設置されている。家は斜めになって床に置かれており、屋根や壁にたくさんの電球が灯っている。これも数えれば80個近くあった。背面の壁にぼんやりした家の映像が映されている。この映像はネットで拾った家の画像100枚を重ね合わせたものだという。
 傾いた家は端的に津波で流されていったニュース映像を思い出す。その家に電球がまとわりついている。津波に流されていった家の歴史、一緒に流されていった家具や細々した調度、暮らしていた家族の思い出、それらがアニミズムのように「家」にまつわりついていることを実感させられる。

 記帳台の横に小さな屋形のマケットが置かれていた。
 生命とか家族とかは、単にそれだけで存在するのではないこと、ドイツの生物学者ユクスキュルの提唱する「環境世界」まで考察されるべきことが示唆されるかのようだ。
 作間の展開するインスタレーションは、見る者を深い思索に誘いこむ。美術という形の表現で、哲学を語っている。
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作間敏宏展「治癒」
2014年5月19日(月)−5月31日(土)
12:00−19:00(最終日17:00まで)
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巷房2、階段下(こうぼう)
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビルB1F
電話03-3567-8727
http://www5.ocn.ne.jp/~kobo/
※巷房のメインギャラリーは3階にあるが、巷房2と階段下は同じビルの地下にある。奥野ビルは戦前造られた鉄筋コンクリートの古いビルだが、現在30軒以上のギャラリーが営業をしている銀座名物の画廊ビルになっている。