巷房地下の作間敏宏展「治癒」を見る

 東京銀座の奥野ビル地下に巷房2と巷房階段下という2つのアートスペースがあり、そこで作間敏宏展「治癒」が開かれている(9月17日まで)。
 作間は今年1月にも根津のギャラリー金魚で個展を開いたが、今回階段下の展示は、その時の大きなビニールハウスに擬したものを小型に再制作したような作品だ。暗い空間に家型の造形が置かれており、その中に小さな電球が40個ほど灯っている。家型は農業用ビニールハウスの形をしているが、金魚での展示同様傾いていて、どこか3.11で流されていった家屋を思わせる。小さな電球は家が育んでいる命だろうか。

 広い方のスペース巷房2には、やはり部屋一杯に大きなビニールハウス様のものが展示されている。材質を聞くと塩ビだとのこと。そこに無数の穴が開けられ、半透明な塩ビと穴を通して何もない空虚な空間が見える。ここには電球は設置されていない。階段下の壊れそうなハウスに置かれていた電球=命はどうしてしまったのだろう。

 作間は言葉に頼らず造形だけで問題を提示し、見る者に考えることを強制するかのようだ。ぜひギャラリーまで足を運んで、作品の前でこれらの意味するものを考えてほしい。
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作間敏宏展「治癒」
2016年9月5日(月)−9月17日(土)
12:00−19:00(最終日17:00まで)日曜休廊
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巷房2、巷房階段下
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビルB1F
電話03-3567-8727
http://gallerykobo.web.fc2.com/
※巷房のメインギャラリーは3階にあるが、巷房2と階段下は同じビルの地下にある。奥野ビルは戦前造られた鉄筋コンクリートの古いビルだが、現在30軒以上のギャラリーが営業をしている銀座名物の画廊ビルになっている。