原美術館の篠山紀信写真展「快楽の館」を見る



 品川区御殿山の原美術館篠山紀信写真展「快楽の館」が開かれている(2017年1月9日まで)。同展のちらしから、

「ここ(=原美術館)で撮った写真をここに帰す(=展示する)」というアイデアのもと、出品作品はすべて当館で撮り下ろした新作で、およそ30名にものぼるモデルを起用したヌード写真です。

 主に美術館の内部で撮影された写真が、その撮影場所に展示されている。あたかもその場所にヌードモデルがいるかのように見せているのだろう。写真パネルはきわめて大きく、モデルが実物大かそれ以上に大きく伸ばされている。
 原美術館の館長もフルヌードのモデルたちに囲まれて写真に収まっている。館長はきちんと正装してまじめな顔で写っている。いや、まさかにやけているわけにはいかないだろうが。でも、館長もヌードになっった方が自然じゃないだろうか。館長の写真はちらしにも使われているが、こちらは夕暮れのなかでの写真で、裸の壇蜜が立っている館長の肩に右手を掛けていて、その上天には月が上っている。
 また庭にもあちこちにヌード写真のパネルが置かれているが、やはりその場所で撮ったものらしい。
 30人のモデルを使い美術館の内外を自由自在に利用してずいぶん贅沢な企画だと思う。タイトルの「快楽の館」の形容のとおり、あの静謐だった美術館が華やかな妖しい空間に変わっていた。
 付け加えれば、ヌード写真の性器はちゃんと消されていた。まあ、ここでそれを見たいとも思わないから何の不満もなかったけれど。
 さて、好き物のお前にとってさぞ満足すべき企画だったろうと揶揄されそうだが、実は一茶に倣って言えば「嬉しさも中くらいなりおらが秋」といったところだった。いや「中くらい」と言ったのは修辞で、本当は「少々なり」と言ったところ。これがまだ20歳前後の頃だったらもしかしたら鼻血くらい出していたかもしれないが、この年になればさほど嬉しくはなかった。ヌード写真の評価が性的な興味に依存しているのがよく分かった。興味が薄れればどんなに造形的に面白くてもさほど評価できるものではない。老婆のヌード写真集が発売されない所以だ。
 ざっと見て15分くらいで出てきてしまった。原美術館は品川駅から徒歩15分くらい、帰りは五反田駅へ向かったから徒歩20分くらいかかったかもしれない。品川駅〜原美術館五反田駅でほぼ1時間。入場料は1,100円、シニア割引はなかったので、割高の印象は否めなかった。