上野千鶴子『身の下相談にお答えします』を読む

 上野千鶴子『身の下相談にお答えします』(朝日文庫)を読んだ。朝日新聞の土曜日に掲載された人生相談「悩みのるつぼ」の上野の回答をまとめたものだ。「悩みのるつぼ」は4人の回答者が交替で回答している。上野のほかは、車谷長吉岡田斗司夫金子勝だったが、途中車谷がやめて代わりに三輪明宏が加わった。それぞれの回答者がユニークなアドバイスをしていて人気があるコラムのようだ。
 本書には50のQ&Aが収録されているが、上野の出番は年間12回ほどなので、これで5年分ということになる。題名が『身の下相談にお答えします』とされたのは、上野に割り当てられた相談に下ネタ系が多いことから付けられたのだろう。相談の見出しを拾うと、「既婚女性と"やばい"感じです:30代男性」「私の性欲をどうしたらいいのか:59歳男性」「セックスレスで枯れそうです:35歳主婦」「性欲が強くて勉強できません:18歳女子」「性欲が強すぎて困ります:15歳男子」「妻との現場を娘に見られました:46歳男性」「30代の彼と別れられません:70歳主婦」等々"やばい"質問が並んでいる。上野はこれらにみごとに回答している。
 もっともこれらの"やばい"回答を理由に、3月に山梨市が依頼していた上野千鶴子の講演を勝手に中止して話題になった。2月に初当選した望月清賢市長が公費で催す講演会の講師としてふさわしくないと判断したためだった。上野の講演会のテーマは「介護や、最後までひとりで生きる心構えを語る」という真面目なものだったのに。そのことをマスコミが取り上げて、市長が講演会の中止を撤回して予定どおり行われたということだ。
 身の下相談への上野の回答は傑作なものが多い。以前このブログでも何度も紹介した。
       ・
「悩みのるつぼ」の驚くような相談(2013年9月1日)
中学生の性欲の悩みに答える上野千鶴子(2012年12月8日)
女子のモテ術、「悩みのるつぼ」(2010年5月22日)
性欲の強い十代女子と上野千鶴子(2009年7月5日)