毎日新聞の日曜日書評欄に「この3冊」という連載がある。毎回別の評者が、一つのテーマについて3冊の本を推薦するという企画だ。2月1日は美術評論家の山下裕二が先に亡くなった美術家赤瀬川原平を知るための3冊を挙げている。「(……)驚くほど多面的な活動をした赤瀬川さんの存在を理解するために、入り口となる3冊を紹介しておきたい」。その3冊は次のとおりだ。
1.全面自供!(赤瀬川原平著/晶文社/3067円)
2.千利休 無言の前衛(赤瀬川原平著/岩波新書/864円)
3.四角形の歴史(赤瀬川原平著/毎日新聞社/1296円)
山下は『全面自供!』は半生が自伝的に語られたものとして、この本と、現在大分市美術館で開催中の大回顧展「赤瀬川原平の芸術原論」の図録が、赤瀬川の全貌を知るための基本文献であるという。
『四角形の歴史』はあまり知られていないけれど、極めつきの名著だという。
自筆のイラストとごく短い文章による絵本という体裁だが、本書で示された思索は、驚くほど深い。「目玉は頭の入口だから、物も風景も何でも通貨する。でも見るというのは、目玉を通ったものを頭がつかむことだ。つまり見るのは、ちゃんと意識する力があってのことだ」−−そう、赤瀬川さんは「見る」という行為を思想にまで高めた人なのだ。
この連載は推薦する人と推薦された人を和田誠が似顔絵に描くことになっている。和田が病気で倒れたときは連載そのものが休みになったほどだ。その和田が赤瀬川と山下を描いたものが下のイラストだ。
左が赤瀬川原平、右が山下裕二
山下裕二の似顔絵を見て、以前山口晃が山下を描いたイラストを思い出した。東大出版会のPR誌『UP』2010年2月号に掲載された山口晃の連載マンガ「すヾしろ日記」第59回に、山口がカラオケを歌ったことが書かれている。
マンガには山口が誰かとカラオケで「あずさ2号」を歌ったと書かれている。これがそのコマだが、このたった3センチ角のコマでそれが誰か分かるのだ。左が山口晃本人、右は美術評論家の山下裕二に間違いないだろう。垂れ目と口のまわりの髭が特徴で、簡単な線でそれをよくとらえている。みごとな描写力だ。
ここで和田誠と山口晃による山下裕二を比べてみると、描いたイラストの大きさを考慮すれば山口晃に軍配を上げたいと思う。
山下裕二の顔写真