赤瀬川原平『ふしぎなお金』(ちくま文庫)を読む。赤瀬川の哲学絵本。まず財布は拳銃に似ていると言う。西部劇のガンマンのガンベルトはむき出しの現金を装着したベルトなのだと。ガンマンはその現金でいつも勝負をしている。日本の場合は刀だった。拳銃も財布も緊張の物件である。いざとなると拳銃をぶっ放すように札びらを切る。でも「いざ」とならないときは、それはそっとポケットに仕舞われている。
現金は血に似ている。どちらもプライベートなものである。お札も血も人の目の届かない自分の中に抑えこむ。お金も血も命にかかわる。エネルギーの源だ。そして流体である。生臭いものである。でも輝いている。いきなり見せられるとドキリとする。
こんな調子で「お金の祖先」、「ニナ(ペットの犬)の手形」、「悪貨は良貨を駆逐する」と続く。
解説を山口晃が担当している。山口は赤瀬川のイラストに注目する。
最初の見開き。拳銃の描かれた吹き出しの点線がもう違うことを言い始める。多分吹き出しの丸の、時計にしたら10時のあたりから描き始める。点が詰んでいるがすぐ間伸びしてくる。3時、ニューっと青丸(ママ)に向けて伸びる。定規は使わないが丁寧な線。良い感じ。10時に向けフィニッシュの辻褄合わせ。一番短い線が最後か。もう赤瀬川さんの呼吸しか浮かばない。
赤瀬川はつくづくアイデアの人だと思う。