千葉市美術館の「赤瀬川原平の芸術原論展」がおもしろい


 千葉市美術館で「赤瀬川原平の芸術原論展」が開かれている(12月23日まで)。赤瀬川は展覧会の始まる直前の10月26日に77歳で亡くなってしまった。
 赤瀬川と言えば、偽千円札事件、ハイレッドセンタートマソン路上観察、それに芥川賞受賞などが思い出される。また『朝日ジャーナル』に「櫻画報」というパロディを連載していたことや、ライカ同盟の活躍、山下裕二との日本美術応援団も思い出される。
 初め、読売アンデパンダン展にゴム製の「ヴァギナのシーツ」などを出品する。ネオ・ダダに参加。ついで東京オリンピックの頃、高松次郎中西夏之らとハイレッドセンターを結成し、銀座の並木通りを掃除するなどのパフォーマンスを行う。また扇風機や椅子をクラフト紙で包むオブジェの制作、これは建物を包むクリストの仕事より早かった。開いた缶詰の内側にラベルを貼った宇宙の缶詰というオブジェ。そして千円札を版画で作って起訴される。この偽千円札事件は美術家や評論家を証人に裁判を闘うが有罪の判決を受ける。『朝日ジャーナル』や『ガロ』などの雑誌に批評的パロディの連載を持つ。ついで書いた小説「父が消えた」で芥川賞を受賞する。(小説では尾辻克彦ペンネームを使った)。それから街角で見つけた変な建築を写真で記録する「トマソン」という活動、それは路上観察学会へ展開し、写真家の東松照明らとともにライカ同盟を結成する。さらに美術評論家山下裕二と日本美術応援団を名乗り、連名で日本美術の紹介や批評活動を行う。
 ほかに類を見ない多彩な活躍だ。ほとんど万能ではないか。すべてにおいて一定の水準に達していた。会場の一角に著書が並べられていたが、100冊を超えているのではなかったか。一時美学校で教えてはいたが、生活の糧は執筆で得ていたのではないかと想像される。そのことは野見山暁冶と共通するようだ。
 展覧会は多彩な赤瀬川の活動を網羅して展示して見せてくれる。ほとんど同時代で赤瀬川の活動を見てきたつもりでいたが、こうしてまとめて見れば、あらためて赤瀬川の業績を展望することができた。現代美術から小説まで、さらに政治批評から考現学まで、幅広く活躍した人だった。それらのどの分野でも決して凡庸でない才能を示したとはいえ、特段に傑出した高さに達したものがあったと言えるのだろうか。いずれも一流のわずかな後ろに位置していたような気がする。いや、マルチな才能を示したことが赤瀬川の真骨頂なのかもしれない。
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赤瀬川原平の芸術原論展
2014年10月28日(火)?12月23日(火・祝)
10:00―18:00(金・土は20:00まで)
11月4日、12月1日休館日
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千葉市美術館
千葉市中央区中央3-10-8
電話043-221-2311
http://www.ccma-net.jp