マーク・トウェイン『ジム・スマイリーの跳び蛙』(新潮文庫)を読む。今年9月の新刊で、副題が「マーク・トウェイン傑作選」と銘打たれている。マーク・トウェインはアメリカ文学の創始者として高く評価されている。裏表紙に、訳者の柴田元幸が厳選した13編の新訳と謳っている。期待して読んだ。
最初に掲載されている超短篇「石化人間」が1962年に発表されている。日本の明治維新の6年前だ。そして最後におかれた「夢の恋人」が1898年の発表、日本では明治30年にあたる。やはり古いせいか、どれもさしておもしろくない。「厳選し」てこの程度なのだろうか。もし戦後のアメリカで『ニューヨーカー』の編集部に持ち込んだら、どれも不採用で掲載されることは絶対にないだろう。そう考えると、100年ほどの間にアメリカでも小説は進歩したということなのだろうか。
中では「夢の恋人」が唯一おもしろかった。何年にもわたって繰り返し見る夢のなかで、「私」はいつも17歳で彼女は15歳だった。場所はミズーリの村で私のはジョージと呼ばれ、私は彼女をアリスと呼んだ。10年後の夢ではミシシッピ州に変わり、年齢は以前と同じ、名前をジャックとヘレンと呼び合った。2年後の夢ではサンフランシスコのオペラハウスで彼女に会う。二人はロバート、アグネスと呼び合う。次の瞬間二人はハワイ諸島のイアオ渓谷を登っている。何度も繰り返し見た夢の記憶。63歳になろうとしている時に見た夢でも、彼女は15歳で私は17歳だった。
晩年に書かれた、このほとんどSFのような短篇は、もう当時は押しも押されもしない文豪だったにもかかわらず、3社から掲載を断られたという。
最後に柴田が「訳者解説」で書いている。
マーク・トウェインは亡くなってからすでに100年以上が過ぎた作家である。けれども、その文章のイキのよさ、みずみずしさ、その歓喜と怒りと哀しみは、いまだとことん生々しい作家だと思う。トウェインの生きた声を、多くの方が聴きとってくださいますように。
小学生のとき、子供向けのダイジェスト版で読んだだけだったトム・ソーヤーやハックルベリイ・フィンを、今度きちんと読んでみよう。

ジム・スマイリーの跳び蛙: マーク・トウェイン傑作選 (新潮文庫)
- 作者: マークトウェイン,Mark Twain,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/08/28
- メディア: 文庫
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