三島由紀夫『作家論』(中公文庫)を読む。三島が『日本の文學』『日本文学全集』『新潮日本文学』『川端康成全集』『現代の文學』の解説として書いたもの。ただ林房雄論のみ雑誌『新潮』に掲載したもので最も力が入っている。本文庫の3分の1、80ページを占めている。
林房雄の他は、森鴎外、尾崎紅葉、泉鏡花、谷崎潤一郎、内田百閒、牧野信一、稲垣足穂、川端康成、尾崎一雄、外村繁、上林暁、武田麟太郎、島木健作、円地文子の14人が取り上げられている。
三島の作家論は初めて読んだが、これは作家の余技などではなく、本格的な作家論だと感服した。「あとがき」で三島自身も「本書は、私批評ともいうべき「太陽と鉄」と共に、私の数少ない批評の仕事の二本の柱を成すものと考えられてよい」と書いている。やはり自信があったのだろう。
解説で関川夏央が、三島にはかねてから、上昇志向の強い地方出身者を嫌うところがあったと、松本清張嫌いを指摘している。また太宰治に対しても「田舎者の文學」と嫌悪していたという。一方三島は森鴎外を極めて高く評価している。鏡花への評価も高い。
そういう意味では、私は三島の評価を肯ずることは難しい。やはりあまり縁のない作家なのだろう。