東京国立近代美術館のジョセフ・クーデルカ展がすばらしい!


 東京国立近代美術館でジョセフ・クーデルカ展が開かれている(1月13日まで)。この写真展がとてもすばらしい! 日本の写真家がみな霞んでしまうほどだ。こんなに優れた写真家を知らなかったことを恥じる。
 展覧会のちらしから、

 ジョセフ・クーデルカ(1938年チェコスロヴァキア生まれ)は、今日世界で最も注目される写真家の一人です。本展はその初期から最新作までえを紹介する展覧会です。
 航空技師として働きながら1960年代初頭に写真を発表し始めたクーデルカは、知人の紹介で手がけることになった劇場写真を通じて、チェコスロヴァキアの写真界にその存在を知られるようになります。1967年には技師の仕事を辞め、写真家として独立。その翌年ワルシャワ条約機構軍のプラハ侵攻を撮影し、その写真は匿名のまま西側に配信され、それをきっかけに1970年、クーデルカは故国を離れました。
 当初イギリス、後にフランスを拠点に、チェコスロヴァキア時代からとりくんでいた「ジプシーズ」や、亡命後にヨーロッパ各地で撮影された「エグザイルズ」などのシリーズを発表。それらは詩的でありながら独特の強さをもつイメージによって、ささやかな人生をとらえつつ、20世紀という時代をめぐる文明論的な奥行きをも供えた作品として高く評価され、クーデルカは一躍欧米の写真界でその名を知られるようになりました。(後略)

 最初の部屋には20歳前後の作品が展示されている。風景とか日常接するちょっと変わったものを撮っているが、その造形感覚の見事さに驚かされる。ついで依頼されて手がけた雑誌の表紙写真、芝居を撮影した写真が続く。すぐ膨大なジプシーを撮影したシリーズ「ジプシーズ」が並べられている。全体の1/3を占めるほどの分量だ。ジプシーたちの家族や生活、行事などを撮っている。それをあの優れた造形感覚で写真作品にしているのだ。優れたドキュメンタリーが同時に造形的にもみごとな作品になっている。作り物の造形にしか過ぎないU田の写真が書き割りのように吹っ飛んでしまう。このジプシーを撮ったクーデルカの仕事に圧倒された。
 ワルシャワ条約機構軍のプラハ侵攻の写真は数も少なく、今回さほど重視されていない。クーデルカの本領はジャーナリストの立ち位置とは少し違うからだろう。
 「エグザイルズ」=放浪、亡命と題された写真もおもしろい。亡命者・放浪者に見える突き放されたような、棄てられたような世界、モノが撮影されている。これも見事な視線だ。
 最後にパノラマ写真がくる。「カオス」と題されたそれは、ヨーロッパの各地の崩壊しつつあるような地形を撮っている。
 こんな優れた写真家がいたことを知らなかった。最初から最後まで圧倒された。写真が単なる造形ではなく、基本が「記録」であることをはっきりと教えられた。「記録」からぶれた時に写真はマニエリスムに走ってしまうのだろう。日本の写真家がみな小粒に見えたのだった。
 展覧会のカタログが完売していて入手できなかった。現在増刷中で、申し込むと送ってくれるとのこと。10日ほど待ってほしいと言われた。人気のほどがよく分かった。久しぶりに優れた写真展を見ることができ、ちょっと興奮した。

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ジョセフ・クーデルカ
2013年11月6日(水)→2014年1月13日(月・祝)
10;00−17:00(金曜は20:00まで)月曜日休館
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東京国立近代美術館
電話03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://www.momat.go.jp