山口晃『すゞしろ日記 弐』が楽しい


 山口晃『すゞしろ日記 弐』(羽鳥書店)を読む。画家山口晃東京大学出版会の月刊PR誌『UP』に毎月もう8年以上連載しているマンガを単行本にしたもの。第1巻にあたる『すゞしろ日記』は同じ版元から2009年に発行されている。この『UP』の判型はA5判という小さなもの。それに毎号1ページこのマンガを連載しているのだが、そんな小さなスペースにタイトルを含めて24コマで構成している。
 毎回、画家山口の日常が描かれていて、それも奥さんとのやり取りが多い。奥さんも東京芸大の出身で、上野桜木町の現代美術のギャラリーに勤めている。ときどきヨーロッパのアートフェアに出張している。性格は少しきつめで、しっかりしているが、ちゃっかりしたところもある。と、8年間も連載を読んでいるとそんなことが読み取れる。山口の描写は正確なので、東京国際アートフォーラムに奥さんのギャラリーが出店していたとき、受付に座っていた女性が彼女だとすぐに分かった。第1巻で小さく描かれた美術評論家山下裕二だとこれも即座に分かったように。

 これが奥さんの顔。本書はB5判と雑誌に比べて144%の大きさだが、雑誌版では1コマの大きさが28mm四方になる。こんなに小さくても特徴を描き出すのが山口画伯の描写力だ。

 本書にはまだ載っていないが、2013年11月号に掲載された「すゞしろ日記」第104回の分。山口晃『ヘンな日本美術史』が小林秀雄賞を受賞したときの授賞式を描いている。タイトルに続く右端の5コマの台詞のみ紹介する。

小林秀雄賞』なるものを頂く.
書いた本が選ばれたのね
実はよく解らぬまま受けてしまい

後で調べておののく.
選考委員/加藤典洋関川夏央橋本治堀江敏幸、養老猛司
受賞者がまたすごい……割愛

受賞作は「美術史」とは名ばかりの単なる「古美術感想文」
何で貰えたんだろう……

まぁ、どうせ「感想文」ならと、兎に角正直にゴマ化さず言葉を探した。文章のシロートだから「てにをは」をしっかりする位の初歩的なところから。

選評をまとめれば「読みやすく面白い」と、云う事のようだ
アリガトゴザイマス

 山口晃『ヘンな日本美術史』については以前ここでも紹介したことがあった。
山口晃『ヘンな日本美術史』を読む(2012年11月23日)
 『すゞしろ日記』第1巻についてはこちら
山口晃「すゞしろ日記」発行される(2009年8月6日)


すゞしろ日記 弐

すゞしろ日記 弐